<p>HR・GovTechを中心としたITサービスの開発・展開を行う株式会社HAB&amp;Co.(ハブアンドコー)は、地方発のスタートアップとして、また中小・零細企業に目を向け、本質的な課題解決に取り組む企業として注目を集めてきました。</p><p>そして5期目となる今年8月5日、医療・福祉分野での人材紹介・派遣サービス大手のトライトグループと株式譲渡契約を締結し、同グループの一員として事業を展開していくことを発表しました。</p><p>今回のM&amp;Aは、MIRAISEの初イグジット事例となります。HAB&amp;Co.設立からこれまでの事業展開とこのたびのM&amp;Aについて、MIRAISEの代表の岩田がHAB&amp;Co.代表の森祐太さんにお聞きしました。</p><p></p><h2><strong>人材採用に悩む中小・零細企業に向き合う</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/30/8ad0479b-f16b-405c-ae36-5f8d3408dbe3/habco202108_01.jpg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>株式会社HAB&amp;Co.代表取締役 森祐太さん</p></div><p>――この度はイグジットおめでとうございます!まず、HAB&amp;Co.と森さんご自身について、簡単にご紹介いただけますか?</p><p><strong>森:</strong>HAB&amp;Co.は2017年に創業した会社です。主に大分・福岡を中心に事業展開をしており、HRTechおよび、GovTechと呼ばれる行政系データと連携したサービスを展開しています。5期目に入ったこの8月に人材紹介・派遣サービス大手のトライトグループに株式をすべて売却し、グループ入りさせていただきました。</p><p>主要サービスの「SHIRAHA」は、地方の中小・零細企業の人材採用に関する課題解決を目指すプロダクトです。自社の専用採用サイトを手軽に作成できるのが大きな特徴で、求人票の作成、さまざまな検索エンジンとの連携、応募者の管理やコンテンツ管理などの機能を備え、求職者のリード獲得から、応募、面接、採用決定といった一連の流れをシームレスにサポートしています。中小・零細事業者の方でも、手軽に自社メディアを使った採用活動がスタートできるサービスとなっています。</p><p>――起業には、ご家庭の影響も大きかったとか。</p><p><strong>森:</strong>私は大分県竹田市の出身で、祖父が画家、父は建設業の社長という、起業が身近な家系に育ちました。キャリアの前半は、リクルートスタッフィングや高等学校協会でのキャリア教育など、採用系の仕事に携わってきました。そこからエンジニアリングを学び、自分のWebサービスの立ち上げや、地元大分のスタートアップの取締役を経て、HAB&amp;Co.設立に至りました。</p><p><strong>岩田:</strong>投資を決める時から、森さんの課題に対する姿勢がすごく印象的だったんですよね。地元のことも、これまでのキャリアを通じて採用活動についてもよく理解しており、人的・経済的に余裕のない中小・零細企業に対するDXという切り口で、本質的な課題を解決しようとしていました。便利なツールはたくさん提供されていますが、中小企業にとっての本当の課題はそれらを活用できる「人がいない」ことだと見抜き、そこに立ち向かっている。そういった起業家としての課題解決の姿勢が、今回の成功に結びついたと思います。</p><p></p><h2><strong>本質的な課題解決と経済合理性との狭間で悩んだことも</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/39/32ed48c3-77b0-4042-91b4-a05da252a669/habco202108_02.jpg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>MIRAISE代表の岩田(右)と森さん</p></div><p>――MIRAISEが投資させていただいたのはちょうど1年前くらいでした。その後のビジネスの展開について聞かせていただけますか?</p><p><strong>森:</strong>想定通りにいかないことの方が多かったですね。私たちが対象とする地方の中小・零細企業には、東京のタクシー広告でよく見るような大手のHRサービスはフィットしません。それらはすごく高機能で良い面もたくさんあるのですが、地方企業の根本的な課題として、そのサービスを使うための時間がなく、その業務をできる人もいない。ソリューションを使いこなせるかどうか以前の問題を、私たちは解決しようとしていました。そのため、一般的なスタートアップが描くような事業曲線や、SaaSの良さである指数関数的なユーザー数の伸長が望めない期間がありました。具体的には、CACやCPAといった顧客獲得単価がなかなか見合わないということがありました。これは、今でも課題として感じているところです。</p><p><strong>岩田:</strong>営業活動やお客さんとの話の中で、新たなニーズが見えてきて、プロダクトやサービスに反映されたということはありますか?</p><p><strong>森:</strong>この領域はロングテールで、非常に時間がかかるものなんだということが見えてきました。5年や10年のスパンの中で、きちんと足をつけてやっていかなければなりません。投資していただいたお金は、一般的には一気に売上を伸ばすために広告費などにつぎ込んだりしますが、我々にとってはそれは効果的ではないと判断しました。HRTechのサービス群を構築しようという戦略を立て、ミニマムなサービスをたくさん作っていくことにしたのです。それぞれのサービスに申し込んでいただいたお客様を包括的にサポートする形で、一企業に対して深く入っていくスタイルで事業を進めていきました。</p><p><strong>岩田:</strong>ロングテールという表現はまさにぴったりですね。その「テール」の部分を取りきっていくために、森さんたちが試行錯誤してきたアプローチは今後も続けていくのだと思います。スタートアップ界隈では、そのようなアプローチはまだあまり事例のないやり方かもしれませんが、HAB&amp;Co.は先行して取り組んできている。それは大きな強みと言えますね。</p><p><strong>森:</strong>経済合理性という意味では、少し難しい領域だったのではと感じています。今でこそ、SDGsが注目されて社会課題にも目が向くようになってきていますが…。そんな中で、心から私たちを信じて出資してくれたMIRAISEさんには、本当に感謝しています。</p><p></p><h2><strong>始まりは1本のメールから</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/47/66b401a3-0028-42b9-8693-95a6fc9e27a3/habco202108_03.png" link_href="" link_target=""></div><p>――トライトグループとの関わりはどのように?</p><p><strong>森:</strong>昨年12月にトライトさんからメールをいただいたのがきっかけです。お話を伺う中でミッションやビジョンに非常に共感しましたし、我々としても、大手と組んでいくことはもちろん望んでいたことでした。その後PoCに進み、年明け頃から協業を一部スタートしていったという流れです。</p><p><strong>岩田:</strong>トライトさんからメールでお問い合わせいただいたということは、HAB&amp;Co.や「SHIRAHA」について、すでに情報をお持ちだったということですね。</p><p><strong>森:</strong>MIRAISE PRの蓑口さんにもいろいろお手伝いいただいたメディア掲載の中で、「TechCrunch」や「BRIDGE」の記事を見ていただいてお問い合わせ下さったそうです。</p><p><strong>岩田:</strong>やはり、露出はとても大事ということですね。日経新聞でも、大分支局の方が地元発のスタートアップとして大きく取り上げてくださったことがありましたね。大分からイグジットが出たということは、良いロールモデルになるんじゃないかと思います。</p><p><strong>森:</strong>まず、地方ではプレーヤー自体が非常に少ないですし、リスクマネーの供給元もほぼない状態なので、なかなかスタートアップが立ち上がってきません。資金調達ができたとしても、イグジットまではなかなか行き着かない。そんな中で、私がやらないと次が立ち上がってこない、お金が下りてこない。おこがましいのですが使命感を持ってやっていました。</p><p><strong>岩田:</strong>地方創生や町おこしとなると、地元の名産や企業誘致、観光という話にすぐなってしまいますよね。でも、IT企業はどこにいてもできます。森さん、HAB&amp;Co.がロールモデルとなることで、大分だけじゃなくて他の地方でもIT企業の創出や活性化にひとつの答えが出てくるかもしれないと思いました。</p><p></p><h2><strong>ミッション・ビジョンを共有、協業からM&amp;Aへ</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/07/27/12/20/23/a772fead-a44b-41f0-a5b1-1b128486824f/----------2021-07-27-12.20.03.png" link_href="" link_target=""></div><p>ーートライトグループとのお話は、その後どのように進みましたか?</p><p><strong>森:</strong>最初は、どれくらいシナジーがあるかという検証からスタートしました。企業側と求職者側の需給ニーズのギャップを埋め、マッチング機会を創出していくという取り組みの中で、我々のサービスや開発力がどう関わり、成果を出していけるかを、技術的な側面を中心に検証しました。トライト側のエンジニアや営業の方とも関わり、ちょっとしたプチ開発をして作った商材を売ってみたりとか。</p><p><strong>岩田:</strong>このあたりは他のエンジニア起業家の方にも大いに参考になると思います。森さんは結果的にうまくいきましたが、企業相手の協業というのは、お金に結びつくかどうかもわからない案件が多いわけですから、営業やビジネス開発には難しさがあると思います。ノウハウや技術だけ聞き出されて終わり、なんていうこともありますからね。森さんは、そういう結果も恐れずに真摯に対応されたわけですが、お気持ちとしてはいかがでしたか?</p><p><strong>森:</strong>確かに、岩田さんが仰るような話は”スタートアップあるある”ですよね。工数をかけてやっても何も生まれなかったという話もよく聞きます。我々の場合は、お互いのミッションやビジョンという根源的な部分がマッチしていたので、迷わずに進むことができましたね。</p><p><strong>岩田:</strong>トライトさん側の熱量や、本気で求められているということを、お話ししていく中で感じ取れた、ということでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>その通りです。我々としても、本気で取り組まなければうまくいかない、という姿勢を見せたつもりでした。そして、やるんだったら先方の想像を超えるスピード、クオリティでやっていこうと意識していました。</p><p><strong>岩田:</strong>本質の部分と目の前の売上はどちらも大事ですよね。本質をひたすら追求し、そこから外れることは一切やらないというスタンスで、目先の利益にとらわれずに大きくなった会社の話も聞きます。一方で、頑固になりすぎて、本質的な部分に共鳴して求めてくれるパートナー企業をすべて蹴ってしまう起業家もいますよね。スタートアップは本来誰かの役に立つためにやっているはずなので、ただただ孤高を守るのも違うかなと僕は思います。トライトグループさんとHAB&amp;Co.はその後M&amp;Aに至るわけですが、そこは森さんの決断で行ったのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>そうですね。本当に一緒にやっていこうというのは、やはりトップ面談で決めました。きちんとオフラインでお会いして、もう一度両者間で今後見ていくべき点を話し合った上で、一緒にやっていこうという話が自然と出てきました。それが4月頃で、そこからは急ピッチでいろいろと進めてきました。</p><p><strong>岩田:</strong>僕は自分のいた会社が買収されるというのはけっこう経験していまして。本当に誰も知らないんですよね。「SkypeってeBayに買収されるんだって」と、当時の社員はニュースで知りました。厳格な守秘義務があるので当たり前なのですが。HAB&amp;Co.の場合は、どのようなタイミングで社員さんとのコミュニケーションを始めたのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>私たちも、最後の最後まで社員には伝えなかったですね。最終的な基本合意ができてから共有を始めました。中途半端な情報を社員に伝えて結局破談に…ということにもなれば、かなり影響が大きいですから。まずはエース級のエンジニアなど、会社のキーマンとなる社員たちに1on1をしました。主要メンバーがこの件で退職してしまうことは、M&amp;Aの契約条項やDD(デューデリジェンス:買収監査)にも響いてくるので、繊細なハンドリングが求められました。</p><p>意識したのは「私の本心・本音をさらけ出す」ということです。今後も会社はHAB&amp;Co.として残っていくこと、まだまだ解決しなければならない課題がたくさんあること、あなたが必要だということを、本気で伝えにいきました。結果として、誰一人辞めずについて来てくれました。</p><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/58/1e7b19b0-0457-4cef-9011-7f29cd3c849c/habco202108_04.jpg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>社員はM&amp;A後も1人も辞めず、変わらずそれぞれの業務に打ち込んでいる</p></div><p>――社員の方々は驚かれていましたか?</p><p><strong>森:</strong>それが、エンジニア系のスタッフが多いスタートアップあるあるで、あまり驚かない人の方が多かったという印象ですね(笑)。「自分の環境が変わらなければ別にいいよ」とか「給料上がるんですか?」とか、そういう感覚の人が多かったです。エンジニアの特徴が出たと言いますか…。</p><p><strong>岩田:</strong>おそらく森さんは、社員にインパクトがないようにということを気にされながらの交渉だったと思います。(トライトさんの本社がある)大阪に引っ越しの必要はなく、大分のオフィスのままである、とかね。ところで今回のM&amp;Aで、森さんとして譲れなかった条件はありますか?</p><p><strong>森:</strong>我々から言うのも少し微妙な話ですが、M&amp;Aはおそらく、バイサイド側の対応が非常に重要なのだと思います。我々のスタートアップとしての機動性と独立性を保ったままパフォーマンスを発揮するのが最も良いやり方だというのを、先方側が理解してくださっていました。僕らが譲れないと思っていたのはまさにそのことでしたから。</p><p><strong>岩田:</strong>バイサイド側の本来あるべき姿ですよね。「欲しい」と思ったものが、買った時に違う形になっていたら嫌なはずなのですが、途中で数字しか見ないような交渉担当者が出てきたりすると、おかしな方向に行ってしまう。僕にも経験があります。やはり、ビジョンやミッションの共通点など、そもそもの出発地点や大前提をキープしたまま交渉を続け、インテグレーションに進むというのがとても大事だと思いますね。</p><p></p><h2><strong>グループ上場も見据え、さらなる事業展開と課題解決へ</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/51/14/b973b5b4-00e9-4b3c-aa34-42b3123bdff4/habco202108_05.jpeg" link_href="" link_target=""></div><p>――M&amp;Aが発表されて、社員の方々も実感が湧いてくる頃だと思うのですが、まずやっていきたいことは?</p><p><strong>森:</strong>まずはきちんとPMI(Post Merger Integration:M&amp;A後の統合プロセス)を達成し、トライトさんとのシナジーを生んで、我々としても利益を出していくということを、数年間でやっていこうと計画しています。</p><p><strong>岩田:</strong>PMIは本当に大事で、M&amp;Aのプロセスとセットで取り組んでいくべきものです。ですから、PMIは交渉の段階から始まっているし、交渉内容がそのままPMIに影響しますよね。</p><p>――最後に、森さんとHAB&amp;Co.の展望についてお聞かせいただけますか?</p><p><strong>森:</strong>トライトグループは介護、医療、建設といった、日本の社会課題となっている領域を長年やっている企業ですが、我々の「SHIRAHA」も、ユーザーの4分の1ほどを介護事業者が占めています。今後は一緒になって、人材に関する社会課題の解決に取り組んでいくことになります。</p><p>さらに今後、グループ全体として上場も見据えています。我々の貢献で課題を解決しながら、もうひとつのゴールとしての上場に向かってやっていけるのは、高いモチベーションに繋がると感じています。我々だけではできなかったことが、グループだとできる。これからは大分・福岡だけでなく日本全国に目を向けて、本質的な課題を解決していくということをぶれずに今後もやっていきたいなと思っています。</p><p><strong>岩田:</strong>HAB&amp;Co.でやってきたことをそのまま継続して、そこに親会社のリソース活用が加わってさらに加速、拡大することができますね。森さん、そしてHAB&amp;Co.の社員にとっても、モチベーションがさらに上がる環境となるでしょう。加えて、親会社の上場という、経済的な面での大きな目標もできる。すごく良い状態になるんじゃないかなと思います。</p><p>――森さん、貴重なご経験をお話しいただきありがとうございました。HAB&amp;Co.をロールモデルに、地域のITの企業がイグジットするという事例がどんどん増えていくといいですね。HAB&amp;Co.のますますのご発展に期待しています!</p><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/51/27/c8a3ff1b-f161-4a0e-ba2b-a79239856a71/habco202108_06.png" link_href="" link_target=""></div><p>◆<a href="https://hab-co.jp/"><u>HAB&amp;Co.</u></a><u><br></u>◆『<a href="https://shiraha.jp/"><u>SHIRAHA</u></a>』<br>◆HAB&amp;Co.プレスリリース「<a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000036135.html"><u>トライトグループとの株式譲渡契約締結について</u></a>」<br>◆<a href="https://www.miraise.vc/news/miraise-radio-009-habco"><u>MIRAISE RADIO #09. HAB&amp;Co.|CEO 森祐太</u></a></p><p><br></p>
<p>MIRAISEでは、課題解決に挑むエンジニア起業家の生の声をお届けするラジオ番組「<a href="https://www.youtube.com/channel/UCV4Ju4OHLYp-2we7vLxWtTg/videos"><u>MIRAISE RADIO</u></a>」の配信をスタートしました。こちらのブログでは、「読む MIRAISE RADIO」として、起業家たちのストーリーをラジオの雰囲気そのままにお伝えしていきます。</p><p>● スピーカー: 株式会社HAB&amp;Co. 代表取締役 森 祐太<br>● MC: MIRAISE Partner 岩田 真一 / PR 蓑口 恵美 </p><div class="limited-width " style=""><div class="iframe-container width-set height-set dimensions-set" data-width="100%" data-height="232px" data-src="https://open.spotify.com/embed-podcast/episode/0h53SSKki6pLucEkK0TiXA"><iframe class="" style="" data-embed-type="generic" data-original-link="&amp;#60;iframe src=&quot;https://open.spotify.com/embed-podcast/episode/0h53SSKki6pLucEkK0TiXA&quot; width=&quot;100%&quot; height=&quot;232&quot; frameborder=&quot;0&quot; allowtransparency=&quot;true&quot; allow=&quot;encrypted-media&quot;&amp;#62;&amp;#60;/iframe&amp;#62;" src="https://open.spotify.com/embed-podcast/episode/0h53SSKki6pLucEkK0TiXA" width="100%" height="232px" frameborder="0" allowfullscreen="true"></iframe></div><hr><p></p><p>「人材獲得競争時代」が到来したといわれる現在。多くの人はスマホやPCから求人を探します。しかし、中小企業の多くはネットを利用した採用活動に慣れておらず、従来と変わらずハローワークに求人票を出し続けています。<br></p></div><p>全国で起こっているこうしたミスマッチを解決しようとしているのが、大分に拠点を置くHRTechのスタートアップ、株式会社HAB&amp;Co.(ハブアンドコー)です。</p><p>同社は、ハローワークの求人票から採用サイトを手軽に作れるサービス『<a href="https://shiraha.work/">SHIRAHA WORK</a>』(シラハワーク)を今年7月に正式リリースしました。その立ち上げ背景や、代表の森さんが起業したきっかけなどについて、じっくりお話を伺いました。</p><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2020/10/13/16/12/25/d6364a52-6074-40f2-a31d-99174ecb7bc5/hab-comember2.png" link_href="" link_target=""></div><p></p><div class="limited-img h2 additionalClassesSet " style=""><p><strong>中小企業と求職者のミスマッチを解決したい</strong></p></div><p>――まず最初に、HAB&amp;Co.が現在提供されているサービスについてお話しいただけますか?</p><p><strong>森:</strong>HAB&amp;Co.は、2017年に創業したスタートアップで、HRTechをベースとした自社サービス・コワーキングスペースの運営・クライアントワークの3つの軸で事業を行っています。</p><p>HRTechサービス『SHIRAHA』(シラハ)は、人材採用サイトやオウンドメディアを手軽に開設・運用できるサービスです。従来あるような複雑なアプリケーションと違って、業種や地域、採用したい人物像などをAIにより分析し、エンジニアの人に依頼しなくてもノーコードでサイトを立ち上げることができます。</p><p>求職者の応募管理、コンテンツの変更や編集などを総称してATSと呼びますが、『SHIRAHA』は中小企業担当者でも簡単に使えるATSをセットで提供しています。オウンドメディアでのリクルーティングから始まり、求職者へのリード獲得、応募・面接、採用までの一連の流れをシームレスにサポートできる形となっているのです。</p><p>――中小企業での採用活動の課題解決に挑戦されているということですね。また、新たにハローワークのAPIと連携したサービスをリリースしたと伺っていますが、こちらは実際にどのような中小企業を想定し、どういった課題を解決しようと開発されたのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>この7月リリースしたのは、先行サービス『SHIRAHA』からスピンオフした『SHIRAHA WORK』というサービスです。日本にある企業数は約420万社といわれていますが、そのうち99%が中小企業に分類されます。その中小企業の半数以上が、採用活動にハローワークを使っているというデータがあります。特に地方ではその傾向が特に顕著で、ほとんどの企業がハローワークを使っているのが実情です。</p><p>しかし、昨今の求職者が情報を得るのはスマホからがメインであり、ハローワークを利用している企業と求職者とのミスマッチがかなり起こっているのではと感じていました。企業側は、募集をかけてもなかなかいい人が来ないと悩む。求職者は、ハローワークの求人票で見た企業について調べようとググっても、採用サイトなどはなく、より深い情報が得られない。私自身も、Uターンする際に求職者として同じような体験をしました。それが原体験となっていて、そうしたミスマッチを解決したいと思ったのがサービス開発のきっかけです。</p><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2020/10/13/16/11/57/52ee2160-c782-4d9d-bf7c-39108edc7d54/hab-codot.jpg" link_href="" link_target=""></div><p>ーーIT業界なんかだと、オウンドメディアを持っていたり、充実した採用サイトがあったりするのが当たり前という感じがありますが…中小企業ではそこまで手が回らないというか、そういうことがそもそもできないという企業は多そうですね。</p><p><strong>岩田:</strong>中小企業ではIT専任者を置くこともなかなか難しいと思いますし、採用サイトがない、それ以前に自社サイトがない、ということもあると思います。中には「いい人材を獲得するには採用サイトが必要」と、課題として認識している企業はあると思いますが、そもそも、何が原因で採用ができていないか気づいていない企業も多いのではないでしょうか。森さんが営業活動をする中で、そうした点についてどのように感じてきましたか?</p><p><strong>森:</strong>まだ人材難ではなかった時代は、大量の母集団があって、その中に一定の確率でいい人がいると考えられていて、採用活動にそれほど工夫は必要なかったのだと思います。しかし現在、特に地方では人口流出や人口減が激しく、「大量の母集団」というものはもはや存在しません。</p><p>しかし、企業側が旧態依然のやり方から未だに抜けきれていない。「求職者ファースト」になっていない採用活動をしている企業が大多数であるというのは、本当に肌身を持って感じているところですね。</p><p></p><div class="limited-img h2 additionalClassesSet " style=""><p><strong>ハローワークのAPIと連携、手軽に採用サイトが作れる『SHIRAHA WORK』</strong></p></div><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2020/10/13/16/12/15/d5c3bcb9-cff2-47fa-bbb6-496ba9ac8c4c/hab-coimg_4475.jpg" link_href="" link_target=""></div><p>――では、新たにリリースした『SHIRAHA WORK』は、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>『SHIRAHA WORK』は、日本で初めてハローワークのAPIと連携したサービスです。全国のハローワークを利用している企業は必ず求人番号というものを持っているのですが、その番号を入力するだけで、API経由でハローワークから情報が取得され、自動的にサイトが作れるというサービスです。</p><p>――採用サイトを作ろうと思うと、まずサイトを立ち上げて記事をいろいろと書いて…と、やらなければいけないことは非常に多いですよね。でも『SHIRAHA WORK』なら、ハローワークに求人票を出していれば、その番号を入れるだけで情報が連携されてサイトが勝手にできてしまう、という感じなのですね。実際に、どれくらいの手間が省けるのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>普通にサイト立ち上げやデザインをスクラッチで作ろうとすると、やはり時間はかかりますし、お金も最低でも数十万レベルでかかってきます。SaaSである『SHIRAHA』なら、インターネット上から完全ノーコードでサイトを作れるようになります。お金の面では、初期費用無料で月額9,800円からスタートできる料金モデルとなっているので、一般的な手法と比べると、サイトを作るまでの時間は圧倒的に短いですし、コストも数十万、数百万の単位でカットできるので、多くの企業の方々に期待していただいている状況です。</p><p><strong>岩田:</strong>採用プロセスについても、フローがきちっとしていない企業もあると思うんですよね。応募が来たらどうフォローアップするか、応募者ごとの選考状況の管理とか、そういったことが決まっていないと、採用サイトは作れてもその後の管理が大変になってしまいます。その点、『SHIRAHA』は採用サイトを作るだけではなく、採用プロセスの管理機能もついているというところが実は大きいのではないかと思います。</p><p><strong>森:</strong>本当にそのとおりで、採用サイトを作ったからといってそれで全然終わりではなく、むしろスタートなんですよね。『SHIRAHA』では、求人を出したあとの管理や、採用活動プロセスの効率化をシステムで支えることができるようになっています。中小企業では、選任の人事担当者を置いていないところもたくさんありますから、テクノロジーの力でマンパワーを極力減らしつつ、全体を効率化できるようなプロダクトを目指しました。</p><p><strong>岩田:</strong>ITに強くない中小企業側が若い人の採用に苦戦する一方、若者側は基本的に最初はネットを使ってサーチする…お互いすごく遠い地点からアプローチが始まっているんですよね。HAB&amp;Co.のサービスは、そこを繋いでいくものだと思っています。</p><p>――私は富山出身なのですが、地元の経営者さんからよく「若い人いない?」「いい人いない?」と聞かれるんですよね。でもホームページを見たら、採用情報すら載っていないみたいな…。そういう企業がたくさん思い浮かぶので、ぜひ『SHIRAHA』『SHIRAHA WORK』を知っていただきたいなと改めて思いました。</p><div class="h2 additionalClassesSet " style=""><p><strong>父親の倒産、高校生へのキャリア教育の経験がミッションの土台に</strong></p></div><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2020/10/13/16/12/42/cd89c0c6-7054-40fc-aef3-f2ad7a65046f/055a.png" link_href="" link_target=""></div><p>――森さんのご経歴を拝見すると、すごくユニークだなと思うのですが…起業背景についてお聞かせいただけますか?</p><p><strong>森:</strong>曽祖父は画家、祖父は美術商、そして父親が建設業を営んでいたりと、芸術や起業が身近な家に生まれました。起業のきっかけとしては、今振り返ると、父親の影響が大きいなと思っています。バブル景気の頃からしばらくは地域でもすごく景気が良くて、元気がいい時代で、父も羽振りがよかった。僕は小さい頃から野球をしていたのですが、誰よりもいいグローブやスパイクを買ってもらうなど、何不自由なく育ててもらっていました。</p><p>しかし時代が変わっていく中で、僕が大学生の頃に父の会社が5,000万円の借金を残して倒産しました。父は一昨年亡くなってしまったのですが、家族で一緒になって最近までその借金を返し続けていたのです。良くも悪くも父の背中を見て育って、倒産まで見たということが、今となっては逆に良かったのかなと感じています。成功している経営者の中には、実は同じような経験をしている方も多いですし、なかなか人が経験しないことができたのかなと。</p><p>――一度は大分から出られたのですよね。</p><p><strong>森:</strong>地方から外に出てみたい気持ちはやはりあったので…。でも26歳の時、長男なんだから帰って来いと言われまして。地方ではよくあることですね(笑)。それでUターンした時に、先にお話ししたように仕事探しで苦労したりもしましたが、縁あって高校生のキャリア教育に携わることになりました。</p><p>その高校は、発達障害や身体の障害を持つ生徒がたくさんいる私立校でした。障害などの特性みたいなものに対して、これまでの自分は単純にかわいそうだなと思っていたのですが、実際に進路指導をする中で、キャリアというのはレールに沿ったものではないと感じるようになりました。生徒たちの指導を通して、人それぞれの生き方や働き方、思いを大切にした支援をしていきたいという思いが強くなり、今HRTechをやっているのだと思います。</p><p>――HRTechの事業だけではなく、コワーキングスペースの運営や、大分の中小企業に貢献するような活動を広くやられているのはなぜかな、と思っていたのですが…家族の経験、これまでのお仕事の経験の延長に今の事業の数々があるのですね。</p><p><strong>岩田:</strong>森さんのお父さんのお話は、僕も今初めて伺いました。森さんが言うとおり、優秀な経営者で、実は大きな挫折や失敗経験を持っているという人は、僕の周りにもけっこういますね。</p><p>業界を見渡して「あ、ここ空いてるから儲かりそうだな」と起業する人もいますが、MIRAISEはそういう人には投資はしません。起業家が持つミッションこそが大事だと考えていて、そのミッションを実現するためにどうテクノロジーを使うのかという点を非常に重視しています。改めて森さんのお話を伺って、改めてそのミッションへの想いの強さを感じました。</p><p><strong>森:</strong>そんなMIRAISEさんだからこそ、支援をお願いしたいと思ったのです。ミッションを実現するためにビジネスをどうやっていくのか、そして、始めたことをどうスケールアップさせていくのか、そうしたことも一緒に考えてくれて…。まず想いを第一に考えてくだっているということを、お話しさせていただく中で確信したのです。今回『SHIRAHA WORK』のプレスリリースを出す時も、本当に親身になっていただきました。</p><p>――今、岩田さんと私はオンラインの画面越しに、すごく笑顔になっています(笑)。MIRAISEとして、そう言っていただけるのは本当に嬉しいことです。さまざまな経験を経て、強い想いを胸に地元大分でHRTechに取り組む森さん、そしてHAB&amp;Co.の今後の展開が楽しみです!</p><p>◆ <a href="https://hab-co.jp/"><u>株式会社HAB&amp;Co.</u></a><u><br></u>◆『<a href="https://shiraha.jp/"><u>SHIRAHA</u></a>』<u><br></u>◆『<a href="https://shiraha.work/"><u>SHIRAHA WORK</u></a>』</p>