株式会社ウゴトル 代表取締役 西川 玲さん

ウゴトル - 日本初の動画添削プラットフォームでスポーツ指導のDX実現へ

2021年6月10日

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MIRAISEでは、課題解決に挑むエンジニア起業家の生の声をお届けするラジオ番組「MIRAISE RADIO」を配信しています。こちらのブログでは、「読む MIRAISE RADIO」として、起業家たちのストーリーをラジオの雰囲気そのままにお伝えしていきます。

● スピーカー|株式会社ウゴトル 代表取締役 西川 玲
● MC|MIRAISE Venture Partner & CTO 布田 隆介 / PR 蓑口 恵美
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「うまくなりたい!」という思いを抱きながらも、何をどうしたら上達できるのかわからないーー。

それは、スポーツに取り組む人々にとって共通の悩みのひとつではないでしょうか。特に成長過程にある子ども・生徒たちにとっては、先生が当たり前のようにできる動きでも難しいと感じられるものです。

そんなスポーツスクールの現場での課題を解決するために、動画添削プラットフォームの提供をスタートしたのが株式会社ウゴトルです。

コロナ禍の中で新たな価値提供を模索するスイミングスクール事業者との連携を皮切りに、これから目指していくスポーツ指導のDX化について、代表取締役の西川玲(にしかわ・あきら)さんにお話を伺いました。

水上・水中カメラで泳ぎを撮影、動画添削ができる『ウゴトル for Lesson』

ーーまず、ウゴトルがどんな会社なのか、お聞かせいただけますか?

西川:一言でざっくり言うと、スポーツを学ぶ人には習得速度の最大化、教える人には収益性の最大化というベネフィットを、動画をベースにした技術で提供する会社です。

ーー今回、ウゴトルは新しいニュースを発表されましたね。どんな内容なのでしょうか?

西川:東急スイミングスクールさんに、『ウゴトル for Lesson』という新たなプロダクトの提供を開始したというものです。既存のグループレッスンに、個別の動画添削の配信という新しい価値を付加する新サービスが『ウゴトル for Lesson』です。

布田:大手スイミングスクールとの連携とは、ビッグニュースですね!『ウゴトル for Lesson』がどんなサービスなのか、詳しくお聞かせいただけますか?

西川:スイミングスクールの既存のレッスンでは、1クラス10〜15人くらいの生徒がいて、先生がその場で「○○に気をつけてやりましょう」など、口頭で説明しています。そこに『ウゴトル for Lesson』を導入すると、レッスン中に水上・水中の2つのカメラで泳いでいる様子を動画撮影し、レッスン後に先生が水上・水中2つの動画を合成して1画面で見られるようにした上で、注意してほしいポイントを書き込むなどの添削をしてレッスン当日の夜には配信します。これによって生徒さんはその日のうちに、先生の添削の入った自分の動画を見ることができるのです。

ーーレッスンを受けている子どもやその親は、どうやってその動画を見ることができるのですか?

西川:『ウゴトル for Lesson』という専用アプリが、すでにAppStoreとGooglePlayで公開されています。ダウンロードは無料で、当社と契約しているスクールさんとその生徒さんが使えるようになっています。『ウゴトル for Lesson』を使うレッスンを受けている生徒さんは、このアプリで配信された動画を見ることができます。

ーーレッスンを受けている子の親御さんにも嬉しいですよね。我が子が頑張って泳いでいる姿を見られるし、添削を見て、子どもと一緒に「ここが良くなったね!」と確認することもできますね。

レッスン当日に添削動画を配信できる『ウゴトル for Lesson』

スイミングスクールが求めていた「今までにない、価値あるサービス」

布田:『ウゴトル for Lesson』導入の背景となる、スイミングスクールが今抱えている課題とはどんなものなのでしょうか。ウゴトルのプロダクトがどうして刺さったのか、その理由を教えていただけますか?

西川:今回の話自体はコロナ前から動いていたのですが、コロナ禍により、スイミングスクールは会員・売上減に加えて感染症対策のためのコスト増加という、ダブルパンチを食らってしまいました。そのため、減ってしまった会員数の回復と増加はもちろんのこと、客単価アップにつながる今までにはない魅力的なサービスの提供というのが、スクール側の課題としてあったのです。
『ウゴトル for Lesson』は、個別の動画添削という新しいサービスで、水泳フォームのわかりやすい撮影・配信に加え、スクールの指導メソッドにしっかり沿った添削も可能です。さらに、現場の負担を増やさずにそれらができるということで、ちょうどニーズに合ったのではないかと思います。

布田:陸上競技などでは、プロはもちろん、部活でも動画撮ってすぐにiPadなんかでフォームをチェックしていたりしますよね。水泳の場合、水中撮影は気軽にというわけにはいかないから、なかなか普及しなかったのかもしれませんね。

水上・水中2つのカメラで動画を撮影

ーースクールの先生たちは、『ウゴトル for Lesson』をどのように使うのですか?

西川:レッスン中にカメラをセットして撮影する以外は、指導はいつも通りに行います。レッスンが終わったら、iPadに動画を読み込みます。水上と水中の2つの動画の合成は、アプリ上でちょっとタイミングを合わせるくらいで簡単にできます。『ウゴトル for Lesson』はレッスン動画の合成・編集に特化しているので、従来の動画編集ソフトで30分以上かかるような作業がわずか数十秒で終わります。
さらに、スイミングスクールには「級」がありますが、級を上げるにはスクールの「進級基準」をクリアしなければなりません。『ウゴトル for Lesson』には、スクール独自の進級基準、クリアできた場合のメッセージ、「あるある」の失敗パターンなどを事前に登録できるので、先生はそこから最適なものをポチポチと選べば添削は完了です。それぞれの生徒さんに合ったメッセージを手間なく伝えられるのです。

ーーコメントのテンプレートも用意されているのなら、本当に簡単に添削できますね!では、従来のスイミングスクールの指導はどのように行われていたのでしょうか?

西川:その場で先生が10人以上の生徒が泳いでくるのを見て、それぞれに口頭でアドバイスしていました。「級」はそれこそ30レベルくらいあったりしますし、それぞれに進級基準が5、6項目あるので、先生もそれを完璧に覚えているわけではありません。「確かこんなポイントがあったはず」というふわっとした記憶でコメントしてしまうこともあるそうです。そのためアドバイス内容がどうしても記憶頼み、先生頼みのレッスンになってしまいがちなのです。

『ウゴトル for Lesson』のフロー

添削はテンプレート化。手間を減らし指導品質も保つ

布田:机上でのシミュレーションから実際のオペレーションの段階に入って、けっこういろんなことがあったのではないでしょうか。実地でやってみて初めてわかったこと、「意外と○○だった!」ということなどはありましたか?

西川:最初は、水泳のフォームが撮れてそれにコメントを付けられたらすごいと思ってもらえるだろう、というイメージでしたが、それ以前のところで驚くこともありました。先生の中には全国レベルで活躍していた選手もいるのですが、そんなレベルの人でさえ、実は自分の泳ぎを映像という形で客観視したことがあまりなかったのです。
もうひとつ、最初は添削のコメントをフリーワードで入力してもらっていたのですが、それだと先生毎に言うことがけっこう違ってしまうのです。コメントをテンプレートから選べるようにしたのは、当初は先生の手間を少しでも減らしたいという思いからでした。しかし、テンプレート化することで、スクールの指導メソッドに沿ったコメントから選ぶという形になり、指導品質を保ちつつ手間も減らせるという、ダブルのメリットがあったというのは大きな気づきでしたね。

布田:それは、スクール側でいろいろ可視化もできて、スクールとしての指導方法もフォーマット化されてきたということですね。生徒側の反応はいかがですか?

西川:やはり、客観的に自分・子どもの泳ぎを見られるのがいい、と言っていただいていますね。スクールの進級テストって実は7割くらい落ちているそうなのですが、落ちた理由や、どこを直していけばいいのかも動画やコメントによってはっきりわかるので、より早く上達できそうだと喜んでいただいています。

ーーただ「できない」ではなくて、「ここを直せばいいんだ!」と、お家でもお子さんと親御さんとが前向きに会話できるのはいいですね。

布田:例えば、「腰が沈んでいるから速く進まない」と言われて、じゃあ腰を上げてみようとやってみても、上げた「つもり」なだけで実際には直っていない…ということが、えてしてスポーツ習得の過程ではありがちだと思います。自分が「やっている」と思っていることと、実際にどうなっているかの差分が見えると、効率よく上達できそうですね。

スイミングからスポーツ全般へ。スクールの独自性を活かせるサービスに

ーー『ウゴトル for Lesson』は、今後のスポーツ指導やスポーツ学習のスタンダードになっていきそうですね。

布田:パリ五輪くらいの頃のオリンピック選手が、最初に習った時にウゴトルを使っていた!みたいな。

西川:夢ですね!パリはもうすぐですけどね(笑)。

ーーきっと、トップアスリートたちは以前から動画を活用できる環境にあるのでしょうが、一般の、しかも子どもたちがそれを使えるようになったのはすごいことですよね。

西川:子どもだからこそ、目で見て理解するのが得意だと思うので、その特性を最大限活かしていきたいと思っています。

布田:では、今後はどのように事業を伸ばしていこうと考えていますか?

西川:今回の導入は、東急スイミングスクールさんのあざみ野店からスタートしています。すでに東急さんからは、他店舗にも続けて展開しようというお声も上がっていますし、もちろん他のスクールでも使っていただきたいと思っています。『ウゴトル for Lesson』は多くのスクールで使っていただくようになったとしても、差別化できなくなることはありません。もともと、スクールはそれぞれ独自の指導メソッドを持っています。『ウゴトル for Lesson』では、動画で泳ぎを見るというのをベースにしつつも、添削用に用意するコメントや設定するチェックポイントによって、各スクールの独自性を活かすことができます。ですから、『ウゴトル for Lesson』の導入が進むことによって、むしろスクールの差別化は進んでいくと考えています。もちろん、スイミング以外にもどんどん展開していきたいですね。

ーー動きの「見える化」によって、より多くの価値が生まれていくということですね。これからのスポーツ指導は、『ウゴトル for Lesson』によって大きく変わっていくのかもしれません。今後の展開も期待しています!


株式会社ウゴトル





Interviewee Profile:

Ryusuke Fuda

Venture Partner & CTO, MIRAISE