NeuralX, inc Founder & CEO 仲田 真輝さん

NeuralX-自分にしかできない技術で、世界の人に心と身体の健康を。

2021年4月3日

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MIRAISEでは、課題解決に挑むエンジニア起業家の生の声をお届けするラジオ番組「MIRAISE RADIO」を配信しています。こちらのブログでは、「読む MIRAISE RADIO」として、起業家たちのストーリーをラジオの雰囲気そのままにお伝えしていきます。

● スピーカー|NeuralX, inc Founder & CEO 仲田 真輝
● MC|MIRAISE CEO 岩田 真一 / PR 蓑口 恵美
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ストレスが多い現代社会において、どのように心身ともに健康を保つかは大きな課題となっています。特に現在は世界中の人々がステイホームを強いられ、スポーツジムの利用も困難になっています。心身の健康についての悩みや不安を抱える人は多くいることでしょう。

NeuralX, inc Founder & CEOの仲田真輝(なかだ・まさき)さんは、運動解析と生体力学的人間シミュレーションの技術に基づくオンラインフィットネスサービスを、米国から世界に提供しようとしている起業家です。

自分にしかできない技術で人々を救えるサービスを提供したいという強い想いを持ち、さまざまな可能性を考え抜いてきた仲田さんに、お話を伺いました。

AI×人間のサポートで「続けられる」オンラインフィットネスサービスを提供

AIが運動をサポートするオンラインフィットネスサービス「Presence.fit」

――仲田さんはMITテクノロジーレビュー『Innovators Under 35 Japan 2020』 や、『Forbes Next 1000 2021』に選出されましたね。おめでとうございます!
仲田さん率いるNeuralX, incは、運動解析と生体力学的人間シミュレーションの技術に基づくオンラインフィトネスサービス「プレゼンス・フィット(Presence.fit)」を展開しています。こちらは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

仲田:プレゼンス・フィット(Presence.fit)」は、AIと人間のハイブリッドにより高いインタラクティブ性を持たせたオンラインフットネスサービスです。運動解析と生体力学的人間シミュレーションの研究成果に基づいて開発されたAIが使われており、Repカウントやペースのスコア化、カロリー計算などを自動化しています。それにより、インストラクターが人間ならではのメンタルケア、モチベーションの維持や向上などに集中することができます。オンデマンドのコンテンツは数多くありますが、やる気が出ない、保てないというのが大きな問題でした。「本当にやる気の出る」フィットネスのプラットフォームとして、今は全米に展開しています。

――私もさっそく利用させていただきましたが、運動を続けたくなる仕組みになっていますよね。使ってみて、すごくエネルギーを感じる時間をいただけたように思います。

仲田:今までは、ジムなどのコミュニティの存在がモチベーションになっていましたが、アメリカではジムもスタジオももう1年くらい営業禁止でクローズしています。日本でも、年齢が高い方ほど、コロナ感染リスクからそうした場所には行きたくないと思う人が多いでしょう。運動は、体づくりという意味ではもちろんのこと、メンタル面においても非常に大切なのですが、自宅で自分ひとりでの運動というのはなかなか続きません。人間がやる気を出すためには、フィードバックをもらえるかどうかがカギとなります。そこで、ひとりでは運動を続けられない、やる気が出ないという悩みを、我々の技術を使って解決できればと考えたのです。

一流のインストラクターが運動のモチベーションを上げてくれる

技術の新しさ、面白さだけではコンシューマーは振り向かない

岩田:MIRAISEとの関わりは、仲田さんからTwitterにご連絡いただいたのが始まりでしたね。MIRAISEは日本を中心にエンジニア起業家に投資しているファンドですが、海外で起業する日本人エンジニアにも非常に注目しています。

NeuralXはある意味研究開発系ゴリゴリの会社ですし、仲田さんご自身もPh.Dをお持ちでずっと研究畑にいらっしゃいましたが、いざサービスを作るにあたって、非常にユーザー側のインサイトを重視していましたよね。自分たちの研究成果をとにかく「使いたい!」ではなく、ユーザーの声にしっかりと耳を傾けて運動を続けられない要因を探り、それに対して自分たちの研究成果をどのように使い、サービス化していくかを考えるという姿勢が素晴らしいなと感じました。研究者が起業する際の課題はこのあたりにあると思うのですが、仲田さんご自身はいかがでしたか?

仲田:本当にそれはおっしゃる通りで…僕自身の思考、脳の仕組みは、やはり技術の面白さが起点になってしまうんですよね。そこにフォーカスしてしまうと、お客さんが不在になってしまう。

実はNeuralXは、米国では僕にとって2社目の会社となります。1社目では、eコマースでの利用を想定し、ARを使って家具を3Dで可視化して、サイズ感やフィッティング感を簡単に確かめられる技術を開発しました。それが2012年のことで、当時はまだARのキットやSDKもなく、基礎から始めて3年くらい費やしました。新しい技術だったのでコンペやハッカソンではたくさん勝てましたが、お客さんに対するヒアリングは一切していなかった。

技術を売っていく時、その素晴らしさを見せるだけなら80、90%の精度でOKなのですが、コンシューマーは100%を期待します。お金を払ってもよいと考える期待値があるので、それを満たせないのであれば、80%いいものを作っても、いくら技術が新しくても意味がないというのを、その3年間で肌で学びました。

――その学びが、今回に活きているのですね。

仲田:以前はテクノロジーだけで何でも解決できると思っていたのですが、やはりコンシューマー目線、ビジネス目線が自分には足りないと感じたので、今回はパートナーとしてビジネス畑の人に参画してもらっています。自分の足りないところは自分自身で補おうと努力するのはもちろんのこと、チームとしても補っていくことを意識してきました。

岩田:ユーザーの方がどう使うのか、本当のペインポイントは何なのかは、深く追求する必要がありますよね。自分の問題を本当に解決してくれるソリューションにこそ、ユーザーはお金を払うということですから。好奇心やエキサイトメントがなければ、エンジニアや研究者は成り立たないと思いますが、それらとユーザー目線との共存・両立は、実は難しいことですよね。ご自身の強み・弱みを踏まえて、ビジネスとしての将来を見据えたチーム構築は、大変参考になります。

NeuralXメンバー。技術者を中心にビジネスサイドのプロも参画している

「なぜ自分がやるのか?」を徹底して考え抜く

――アメリカでは2社目の起業とのことですが、今のサービスで起業しようと思ったきっかけは何でしょうか?

仲田:ひとつは、他ではない自分が起業する意味は何かということです。先ほどお話ししたように、アメリカに渡ってからARで1社目を起業しました。それは技術が面白いからやったのですが、ARはコンピュータービジョンのエンジニアやリサーチャーが得意なことで、技術者のボリュームもそれなりにありました。そこでの勝負は技術的には面白いけれど、本当に自分が勝てるのか、自分だからこその差別化ができるのかと言ったら、そこまでの自信はありませんでした。

もうひとつは、自分が本当に何をしたいのか、何に没頭できるのかということ。僕は技術を使って人にハッピーになってもらうこと、人に驚いてもらうのが好きなんです。自分だからこそできることなのか、そして、自分が没頭できることなのかどうか。今回の起業にはこの2つの軸があります。

――その2軸から、人を幸せにするために何ができるかを考えていったのですね。

仲田:自分のスペシャリティは何かといえば、やはりアメリカで10年以上研究を続けてきた人工生命、人間シミュレーションです。これらは、世界で唯一であると誇りを持って言うことができます。それを使って、人々のどんな「痛み」を解決できるか。そこで浮かんだのが健康問題でした。私自身、家族や親しい友人の健康、特に精神面での健康の問題に直面してきて、救いたいのに救ってあげられなかった、力になれなかったという経験がありました。ですからずっと、健康問題に対する関心は強くあったのです。

――ご自身にとって大切な方々を救ってあげたかった…そうした想いが背景にあるのですね。

仲田:それで、AIや脳科学にも興味を持って学んできました。今はストレス社会とも言われ、メンタルヘルスの問題はすでに社会全体の問題でもあります。メンタルの問題とは言うけれど、実は体を動かすことによって、脳からいいホルモンが出て心にも良い影響を与えることができます。運動することで、メンタルの問題も解消する…それができれば、社会のメンタルヘルスの問題や、今それで困っている人たちを救うことができると考えました。運動の中でも、フィットネスなら誰でも簡単に始めることができます。既存のインフラやコンテンツは多くありますが、もっと多くの人に最適化できる仕組みを作りたいと思いました。そうした技術とペインの融合があって、プレゼンス・フィットが生まれたのです。

岩田:起業家に向けての有名な質問に「Why you?」というのがありますよね。自分の棚卸しをして、強みや経験を掛け合わせることで何らかの価値を生み出せるようになる。「この分野が空いているから」とか「儲かりそうだから」と起業する人がいますが、多分それではうまくいきません。自分ならでは、自分でなければならない理由を深く考えてら起業すると、自分の強いモチベーションにもなりますし、人に伝わるメッセージも非常に力強いものになりますね。

仲田:会社を作るのは誰にでもできますよね。ただ、本当に成功させたかったら、起きている時間すべてをかける。寝る時間を削ってもやる。「Why you?」の答えをしっかり自分で持っていなくては、そこまでやりきることはできないと思います。

誰でも・どこでも使えるサービスで、世界中の人を健康にしたい

世界中どこにいてもクオリティの高いクラスが手軽に受けられる

岩田:今、ウォーキングくらいしかしていない僕からの質問ですが…仲田さんがいらっしゃるLAなんかは、フィットネスに関して非常に意識の高い人が多いと思います。そのあたりの事情もお聞かせいただけますか?

仲田:確かに、LAやNYでは美や健康に対する意識がとても高い人が多いです。フィットネス人口も多いですし、忙しい人でも運動を欠かしません。例えば弁護士、銀行マン、ベンチャーキャピタリストなど、すごく稼いでいて超多忙な人ほど、意識して運動の時間を取っていますね。いかに自分の生産性を高めるかを意識している彼らにとって、心身の健康は最重要課題といってもよいかもしれません。特に朝5時、6時のジムは盛況です。朝、運動して筋肉を動かすことで酸素の供給量が上がり、脳も活性化することができます。それは科学的に証明されていることですが、それを知らなくても、経験則的に実感し、実行している層がすごく多いですね。

岩田:プレゼンス・フィットも、そういった意識の高い人たちが本当に満足できるような設計になっていると思うのですが、そのクオリティのクラスをリモートでも受けられるのがすごくいいですよね。

仲田:それがすごいチャンスだなと思っています。LAは、世界的に見ても優秀なインストラクターが多くいます。プレゼンス・フィットのインストラクターにも、ハリウッド映画の主役級の俳優たちをトレーニングしていた人がいます。そういった人たちを、例えば日本に呼ぼうとすると、時間もお金もかかりました。しかし、コロナのパンデミックが起きたことでデジタルへの意識が高まり、DXという新しい概念が普及したことにより、これまでアクセスが難しかったことが簡単にできる世の中になりました。いい意味で革新が起きたんじゃないかなと思っています。

――現在、在宅・デジタルでのフィットネスのあり方が変わっていくタイミングであると思うのですが、そうした中で、仲田さんは今後どのような世界を目指していくのでしょうか?

仲田:アメリカ西海岸から始まった我々のサービスは、今は全米に広がっています。今後はヨーロッパ、アジアと展開していきたいと思っています。LAトップのインストラクターに教えてもらえるという気持ちの高揚感、こうしたことは心理面で非常に有効です。ただ、人には目や脳の限界があって、1回のレッスンでちゃんと見られるのはせいぜい5、6人なんですね。そうすると、優れたインストラクターの指導を受けるには、ごく小さなクラスの空きを待ったうえで、ものすごく高いお金を払わなくてはなりません。私の描くビジョンは、経済的、肉体的、精神的な負担がなく、皆が健康になるというものです。ですから、優れたインストラクションを誰にでも手の届くものにしなければなりません。

――そこでAIを使うということですね。

仲田:AIは今オペレーションコストがゼロなので、AIをアシスタントとしてRepカウント(※)やペースのスコア化などに使うことで、どのユーザがどれだけできているのかをひと目で分かるようにインストラクターポータルで可視化し、それによりインストラクターの仕事を軽減し、クラスをスケール化することができます。トップのインストラクターのクラスでサービスの質を保ちながら、コストをしっかり落とすことができる。AIを入れることで世界中の誰にでも、どこからでもアクセスできるサービスにし、世界中の優れたインストラクターに参画していただいてサービスの質を高く保ってブランドを構築し、世界に展開していくというのが、我々が現在描いているビジョンです。

※エクササイズ中に実行された回数のカウント

――今でももちろん日本でプレゼンス・フィットは使えますが、今後はアメリカから世界を目指すということで、日本での本格的なサービス展開が楽しみですね!本日はありがとうございました。


◆『プレゼンス・フィット(Presence.fit)
仲田さんWebサイト


Interviewee Profile:

Shin Iwata

Partner & CEO, MIRAISE