株式会社HAB&Co. 代表取締役 森 祐太さん

HAB&Co. - 地元大分からHRTechで中小企業の人材不足問題に挑む

2020年8月4日

MIRAISEでは、課題解決に挑むエンジニア起業家の生の声をお届けするラジオ番組「MIRAISE RADIO」の配信をスタートしました。こちらのブログでは、「読む MIRAISE RADIO」として、起業家たちのストーリーをラジオの雰囲気そのままにお伝えしていきます。

● スピーカー: 株式会社HAB&Co. 代表取締役 森 祐太
● MC: MIRAISE Partner 岩田 真一 / PR 蓑口 恵美


「人材獲得競争時代」が到来したといわれる現在。多くの人はスマホやPCから求人を探します。しかし、中小企業の多くはネットを利用した採用活動に慣れておらず、従来と変わらずハローワークに求人票を出し続けています。

全国で起こっているこうしたミスマッチを解決しようとしているのが、大分に拠点を置くHRTechのスタートアップ、株式会社HAB&Co.(ハブアンドコー)です。

同社は、ハローワークの求人票から採用サイトを手軽に作れるサービス『SHIRAHA WORK』(シラハワーク)を今年7月に正式リリースしました。その立ち上げ背景や、代表の森さんが起業したきっかけなどについて、じっくりお話を伺いました。

中小企業と求職者のミスマッチを解決したい

――まず最初に、HAB&Co.が現在提供されているサービスについてお話しいただけますか?

森:HAB&Co.は、2017年に創業したスタートアップで、HRTechをベースとした自社サービス・コワーキングスペースの運営・クライアントワークの3つの軸で事業を行っています。

HRTechサービス『SHIRAHA』(シラハ)は、人材採用サイトやオウンドメディアを手軽に開設・運用できるサービスです。従来あるような複雑なアプリケーションと違って、業種や地域、採用したい人物像などをAIにより分析し、エンジニアの人に依頼しなくてもノーコードでサイトを立ち上げることができます。

求職者の応募管理、コンテンツの変更や編集などを総称してATSと呼びますが、『SHIRAHA』は中小企業担当者でも簡単に使えるATSをセットで提供しています。オウンドメディアでのリクルーティングから始まり、求職者へのリード獲得、応募・面接、採用までの一連の流れをシームレスにサポートできる形となっているのです。

――中小企業での採用活動の課題解決に挑戦されているということですね。また、新たにハローワークのAPIと連携したサービスをリリースしたと伺っていますが、こちらは実際にどのような中小企業を想定し、どういった課題を解決しようと開発されたのでしょうか?

森:この7月リリースしたのは、先行サービス『SHIRAHA』からスピンオフした『SHIRAHA WORK』というサービスです。日本にある企業数は約420万社といわれていますが、そのうち99%が中小企業に分類されます。その中小企業の半数以上が、採用活動にハローワークを使っているというデータがあります。特に地方ではその傾向が特に顕著で、ほとんどの企業がハローワークを使っているのが実情です。

しかし、昨今の求職者が情報を得るのはスマホからがメインであり、ハローワークを利用している企業と求職者とのミスマッチがかなり起こっているのではと感じていました。企業側は、募集をかけてもなかなかいい人が来ないと悩む。求職者は、ハローワークの求人票で見た企業について調べようとググっても、採用サイトなどはなく、より深い情報が得られない。私自身も、Uターンする際に求職者として同じような体験をしました。それが原体験となっていて、そうしたミスマッチを解決したいと思ったのがサービス開発のきっかけです。

ーーIT業界なんかだと、オウンドメディアを持っていたり、充実した採用サイトがあったりするのが当たり前という感じがありますが…中小企業ではそこまで手が回らないというか、そういうことがそもそもできないという企業は多そうですね。

岩田:中小企業ではIT専任者を置くこともなかなか難しいと思いますし、採用サイトがない、それ以前に自社サイトがない、ということもあると思います。中には「いい人材を獲得するには採用サイトが必要」と、課題として認識している企業はあると思いますが、そもそも、何が原因で採用ができていないか気づいていない企業も多いのではないでしょうか。森さんが営業活動をする中で、そうした点についてどのように感じてきましたか?

森:まだ人材難ではなかった時代は、大量の母集団があって、その中に一定の確率でいい人がいると考えられていて、採用活動にそれほど工夫は必要なかったのだと思います。しかし現在、特に地方では人口流出や人口減が激しく、「大量の母集団」というものはもはや存在しません。

しかし、企業側が旧態依然のやり方から未だに抜けきれていない。「求職者ファースト」になっていない採用活動をしている企業が大多数であるというのは、本当に肌身を持って感じているところですね。

ハローワークのAPIと連携、手軽に採用サイトが作れる『SHIRAHA WORK』

――では、新たにリリースした『SHIRAHA WORK』は、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

森:『SHIRAHA WORK』は、日本で初めてハローワークのAPIと連携したサービスです。全国のハローワークを利用している企業は必ず求人番号というものを持っているのですが、その番号を入力するだけで、API経由でハローワークから情報が取得され、自動的にサイトが作れるというサービスです。

――採用サイトを作ろうと思うと、まずサイトを立ち上げて記事をいろいろと書いて…と、やらなければいけないことは非常に多いですよね。でも『SHIRAHA WORK』なら、ハローワークに求人票を出していれば、その番号を入れるだけで情報が連携されてサイトが勝手にできてしまう、という感じなのですね。実際に、どれくらいの手間が省けるのでしょうか?

森:普通にサイト立ち上げやデザインをスクラッチで作ろうとすると、やはり時間はかかりますし、お金も最低でも数十万レベルでかかってきます。SaaSである『SHIRAHA』なら、インターネット上から完全ノーコードでサイトを作れるようになります。お金の面では、初期費用無料で月額9,800円からスタートできる料金モデルとなっているので、一般的な手法と比べると、サイトを作るまでの時間は圧倒的に短いですし、コストも数十万、数百万の単位でカットできるので、多くの企業の方々に期待していただいている状況です。

岩田:採用プロセスについても、フローがきちっとしていない企業もあると思うんですよね。応募が来たらどうフォローアップするか、応募者ごとの選考状況の管理とか、そういったことが決まっていないと、採用サイトは作れてもその後の管理が大変になってしまいます。その点、『SHIRAHA』は採用サイトを作るだけではなく、採用プロセスの管理機能もついているというところが実は大きいのではないかと思います。

森:本当にそのとおりで、採用サイトを作ったからといってそれで全然終わりではなく、むしろスタートなんですよね。『SHIRAHA』では、求人を出したあとの管理や、採用活動プロセスの効率化をシステムで支えることができるようになっています。中小企業では、選任の人事担当者を置いていないところもたくさんありますから、テクノロジーの力でマンパワーを極力減らしつつ、全体を効率化できるようなプロダクトを目指しました。

岩田:ITに強くない中小企業側が若い人の採用に苦戦する一方、若者側は基本的に最初はネットを使ってサーチする…お互いすごく遠い地点からアプローチが始まっているんですよね。HAB&Co.のサービスは、そこを繋いでいくものだと思っています。

――私は富山出身なのですが、地元の経営者さんからよく「若い人いない?」「いい人いない?」と聞かれるんですよね。でもホームページを見たら、採用情報すら載っていないみたいな…。そういう企業がたくさん思い浮かぶので、ぜひ『SHIRAHA』『SHIRAHA WORK』を知っていただきたいなと改めて思いました。

父親の倒産、高校生へのキャリア教育の経験がミッションの土台に

――森さんのご経歴を拝見すると、すごくユニークだなと思うのですが…起業背景についてお聞かせいただけますか?

森:曽祖父は画家、祖父は美術商、そして父親が建設業を営んでいたりと、芸術や起業が身近な家に生まれました。起業のきっかけとしては、今振り返ると、父親の影響が大きいなと思っています。バブル景気の頃からしばらくは地域でもすごく景気が良くて、元気がいい時代で、父も羽振りがよかった。僕は小さい頃から野球をしていたのですが、誰よりもいいグローブやスパイクを買ってもらうなど、何不自由なく育ててもらっていました。

しかし時代が変わっていく中で、僕が大学生の頃に父の会社が5,000万円の借金を残して倒産しました。父は一昨年亡くなってしまったのですが、家族で一緒になって最近までその借金を返し続けていたのです。良くも悪くも父の背中を見て育って、倒産まで見たということが、今となっては逆に良かったのかなと感じています。成功している経営者の中には、実は同じような経験をしている方も多いですし、なかなか人が経験しないことができたのかなと。

――一度は大分から出られたのですよね。

森:地方から外に出てみたい気持ちはやはりあったので…。でも26歳の時、長男なんだから帰って来いと言われまして。地方ではよくあることですね(笑)。それでUターンした時に、先にお話ししたように仕事探しで苦労したりもしましたが、縁あって高校生のキャリア教育に携わることになりました。

その高校は、発達障害や身体の障害を持つ生徒がたくさんいる私立校でした。障害などの特性みたいなものに対して、これまでの自分は単純にかわいそうだなと思っていたのですが、実際に進路指導をする中で、キャリアというのはレールに沿ったものではないと感じるようになりました。生徒たちの指導を通して、人それぞれの生き方や働き方、思いを大切にした支援をしていきたいという思いが強くなり、今HRTechをやっているのだと思います。

――HRTechの事業だけではなく、コワーキングスペースの運営や、大分の中小企業に貢献するような活動を広くやられているのはなぜかな、と思っていたのですが…家族の経験、これまでのお仕事の経験の延長に今の事業の数々があるのですね。

岩田:森さんのお父さんのお話は、僕も今初めて伺いました。森さんが言うとおり、優秀な経営者で、実は大きな挫折や失敗経験を持っているという人は、僕の周りにもけっこういますね。

業界を見渡して「あ、ここ空いてるから儲かりそうだな」と起業する人もいますが、MIRAISEはそういう人には投資はしません。起業家が持つミッションこそが大事だと考えていて、そのミッションを実現するためにどうテクノロジーを使うのかという点を非常に重視しています。改めて森さんのお話を伺って、改めてそのミッションへの想いの強さを感じました。

森:そんなMIRAISEさんだからこそ、支援をお願いしたいと思ったのです。ミッションを実現するためにビジネスをどうやっていくのか、そして、始めたことをどうスケールアップさせていくのか、そうしたことも一緒に考えてくれて…。まず想いを第一に考えてくだっているということを、お話しさせていただく中で確信したのです。今回『SHIRAHA WORK』のプレスリリースを出す時も、本当に親身になっていただきました。

――今、岩田さんと私はオンラインの画面越しに、すごく笑顔になっています(笑)。MIRAISEとして、そう言っていただけるのは本当に嬉しいことです。さまざまな経験を経て、強い想いを胸に地元大分でHRTechに取り組む森さん、そしてHAB&Co.の今後の展開が楽しみです!

株式会社HAB&Co.
◆『SHIRAHA
◆『SHIRAHA WORK

Interviewee Profile:

Shin Iwata

Partner & CEO, MIRAISE