MIRAISE CEO 岩田 真一 / CTO 布田 隆介

MIRAISE On-Deck プログラム - エンジニアに自分のアイディアに集中する100日を

2020年5月12日

MIRAISEでは、課題解決に挑むエンジニア起業家の生の声をお届けするラジオ番組「MIRAISE RADIO」の配信をスタートしました。こちらのブログでは、「読む MIRAISE RADIO」として、起業家たちのストーリーをラジオの雰囲気そのままにお伝えしていきます。

● スピーカー: MIRAISE CEO 岩田 真一 / CTO 布田 隆介
● MC: MIRAISE PR 蓑口恵美


ある日、夜も眠れないほどの良いアイディアを思いついた。これは起業か!との思いが頭をかすめるが、やはりリスクが高すぎるのでは…。

――そう考えてモヤモヤしているエンジニア、あなたの周りにはいませんか?

MIRAISEでは、そんなエンジニアを資金100万円とメンタリングで支援する100日プログラム「On-Deck」を用意しています。「MIRAISEの本質は『On-Deck』にこそある」と話すパートナー岩田・布田が、このプログラムに込めた熱い思いを語ります。

100日・100万円で起業を目指すプログラム

――今日は、MIRAISEが提供している「On-Deck」プログラムについて伺います。強い思いを込めて開発されたと聞いていますが、実際にどのようなプログラムなのでしょうか?

岩田:布田さんとシンガポールで合宿をして、とことん話し合って作ったプログラムです。普通のシードファンドのような形ではなく、起業しやすいきっかけを提供する仕組みができないか、と。MIRAISEはベンチャーキャピタル(VC)ではありますが、本質は「On-Deck」であり、むしろこっちが本体だった…そんな感じですね。

布田:「On-Deck」は100日間のプログラムで、起業しようかどうか迷っている人や、フリーランスで本格的にプロダクト開発に取り組みたいと考えているような人が主なターゲットとなります。100日間の資金として100万円を出資し、期間終了後にMIRAISEだけではなく他の投資家さんも含めて改めて出資する…というプログラムです。

――100日ということは、ちょうど3か月くらいですね。

布田:そうですね。100日で100万円は換算すれば1日1万円ということなので、計算しやすい。ひとりで参加してもいいし、デザイナーが必要になったら「1日分1万円のうち5,000円でこの期間、デザイナーにお願いしよう」ということもできる。そうした経営のシミュレーションというか、お金の面でのトレーニングにもなりますね。

――その「100」がだんだん減っていくんですよね。お金の「100」も、日数の「100」も減っていく。それらを管理して、どのように100日間で成果を出すか…そういうことに挑戦するわけですね。

布田:そのとおりです。まず最初に起業家の人と一緒に100日後のゴールを決めます。その後は、2週間に1回のレビューを基本として、サポートを行なっていきます。レビューの場では、開発で困っていることを聞いてアドバイスしたり、次の投資家に向けたピッチ(プレゼン)の練習をしたりします。

岩田:いわゆるアクセラレータープログラムはいろんな所でやっていますが、だいたい期間の最後にプレゼン練習をするんですね。一方、MIRAISEの「On-Deck」では、隔週のメンタリングの時間にプロダクト開発とピッチの練習を並行してやっていきます。この方法を「パラレルメソッド」と名付けました。最終的なゴールは次の資金調達なので、それを意識して最初からやっていこうということです。

プロダクトができた後でピッチ資料を作り始めると、外からの視点が置き去りになってしまうことがあるんですね。最初からピッチ資料作りをしていくことで、どのようにプロダクトを訴求していくべきか、わかりやすく伝えられているかどうか、そういった視点がプロダクト開発にも生きてきます。並行してやっていくのは大変ですが、それだけの意義はあると思っています。

――2週間おきに、自分がアウトプットとして「誰のためのどのような課題解決なのか」をわかりやすく伝える練習がセットになっているということですね。

プログラム開始前の目標設定からサポート

――先ほど、「100日後のゴールを一緒に決める」と布田さんがおっしゃっていましたが、そのゴールは自分で先に考えておいてからMIRAISEにコンタクトするのがいいのでしょうか。それとも、一緒に考えてもらえるのでしょうか。

布田:「On-Deck」がスタートするとあっという間に100日経ってしまいますから、最初にディスカッションしながら一緒に考えていくのがいいと思いますね。

岩田:プログラムが始まる前に、ゴール設定を一緒に考える時間を長めにとるのが大事だと思っています。

布田:「こういうものが作りたい」という思いに対して、僕らがいろいろ質問を投げかけながら目標を定めていきます。ディスカッションの中で、本人が思っていたのとは違う方向性が見いだされることもあります。そうして深く話し合って「じゃあこれに決めますか」とお互い納得してから、腰を据えて作り込む100日間がスタートするというのが理想です。

――それでは、プログラムは100日間ではありますが、実際は100日より長い間伴走するということなんですね。

岩田:そうですね。「On-Deck」に限らず、スタートアップ期やシード期って、資金調達するとただちに時計が動き出すんですよ。ちょっと逆説的なんですけど、またすぐ次の資金調達の時期が来てしまう。ですから、最初にどれくらい深く考え抜いているかというのが大事なのです。その段階からお付き合いしましょう、というのが我々のスタンスですね。

布田:いきなりピッチ作ってデモ持って投資家を回るエンジニアって、相当ツワモノというか、もう”2回目起業家”くらいしかいないんじゃないですか。

――でも「VCに会う」となったら、しっかりバッチリ準備しないといけないんじゃないか…と考える方も多いと思います。

布田:そうですね。すると「そんなことしなきゃいけないんなら、起業しなくていいや」となる。フリーランスとして好きなもの作って、好きなコード書いて生きていった方がいいやってなっちゃうんです。エンジニアって「0か1か」みたいな思想の人が多いので…。そんな、お金をくれるかどうかわからない人にスーツ着て会いに行くなんて、と。

岩田:会いに行った方がいいんですけどね(笑)。でもなかなかね、効率悪いと思ってしまうという。

布田:とはいえ、フリーランスのままでは個人で何かやろうとしても時間が限られるから、本当にやりたいと思っていることに没頭するのは難しかったりする。そこで「On-Deck」が集中して開発できる期間を提供するのです。期間中にスタートアップのルールもわかってくるし、終了時には次の調達、さらに大きな調達ができるようになっている。最初の練習の場となるということですね。

岩田:フリーランスは受託案件でかなり多忙だと思うのですが、「On-Deck」の100日間は、受託をストップして自分の開発に集中できる100日間ですね。100万円の資金があるから、受託しなくても生活できる。また、「On-Deck」に参加すると、MIRAISEの投資先起業家のオンラインコミュニティ「4c」に入ることができます。そこで先輩起業家に質問したり、司法書士などの専門家を紹介してもらったり、ということができるようになります。

「On-Deck」を巣立った第1号スタートアップは、次の調達ラウンドへ

――「On-Deck」の「100」には、いろいろな思いが込められているんですね。

岩田:資金100万円については「そんな少額で大丈夫なの?」と感じる人もいるかもしれませんね。そこでポイントとなるのが、MIRAISEが出資するのはエンジニアだけということです。エンジニアではない人は、起業する時には必ずエンジニアを雇うか、アウトソースしないといけないんですね。それなら100万円じゃ足りないかもしれない。でも、エンジニアは自分でプロダクトを作れるので、自分が食べていけるだけの資金があればいいんです。その点が、この金額感とセットになっているわけですね。

布田:だいたい3か月あれば、エンジニアは何かしら人に見せられるくらいのものは作れますから。さらに、「起業してこのプロダクトでやっていくぞ!」という状態から始める場合は、この3か月という期間がちょうどいい感じじゃないかと。半年などそれ以上だと、燃え尽きたり、疲れが出てきたりする恐れがあります。3か月で一区切りとして、次のお金を調達するという流れがちょうどいいと思いますね。

――実際に、この「On-Deck」プログラムをすでに利用した起業家やチームはいるのですか?

布田:最初に参加したのはManifoldという会社です。「On-Deck」での彼らのゴールは「β版を完成させること」でした。α版をまず作って1回テストして、その後β版を作るという流れでしたね。

岩田:確かα版リリースの時は、「4c」で他の起業家たちに試してもらい、フィードバックをもらっていましたね。

――なるほど。コミュニティの中でフィードバックがもらえるのですね。自分たちでテストユーザーを集める手間がいらなくて早いし、起業を目指すエンジニアという自分の状況をわかってもらっている上でアドバイスが受けられるのはいいですね。

布田:Manifoldは昨年末で「On-Deck」の100日が終わりまして、年始から資金調達を始めて新たな投資家が何人か見つかり、僕らも追加で出資しました。今はちょうど、正式版をリリースしたところですね。

ビジネス知識はゼロでいい。ワクワクするアイディアひとつ持って来てほしい

――最後に、この「On-Deck」プログラムに対する思い、「こういう人に来てほしい!」というメッセージをお聞かせください。

岩田:よく言っているのですが、エンジニアは本当に起業に向いていると思うんですよね。でも、アイディアや技術があっても、どうやって起業したらいいのかがわからない。先ほどのManifold代表の森さんも「会社設立資金ってどれくらいかかるんですか?」というところから始まりました。

ですから、起業や経営の知識がまったくない人でも、全然かまいません。フリーランスとしてやっていけるようなエンジニアは優秀だと思うので、起業しよう、スタートアップ化していこう、という人たちがもっと増えてきたらいいなと。

布田:「お金にならなそう」とか自分で最初からバイアスをかけてしまわずに、アイディアを思いついた段階で、とりあえず僕らのもとに来てもらえるといいなと思いますね。「これを作ったら儲かりそう」というよりは、今までにないものができそうだ、思いついた、ということについてまずは技術的なディスカッションをしていければ。ビジネスについては、その後から一緒にしっかり考えていけたらいいと思います。

岩田:GoogleもFacebookも、最初はエンジニアの思いつき、アイディアでしたから。

布田:どちらも、最初から広告で儲けるぞってスタートしたサービスではないですからね(笑)。

岩田:逆に言うと、MIRAISEの場合は「こういう感じでビジネスしたら良さそうなんで」という人はあまり投資に至らないことが多いですね(笑)。そういう人には、多分ほかにも投資家が付くでしょうから。

どちらかというと、「こんなものがあったらすごいんじゃないか」「これができたら超便利になるんじゃないの」というエンジニアが夜な夜な考えたアイディア、思いつきを支援したい。これまで経験のないマネタイゼーションのことなどは、私たち投資家と一緒に考えていけばいいのです。

――お金を集めるためにちゃんとプレゼンしなきゃ、というところまで気負わずに、「思いついちゃった!」ワクワクの気持ちでそのまま来てほしいということなんですね。「On-Deck」プログラムこそMIRAISEの本質だと最初に伺いました。それほどの思いが込められたこのプログラムについては、MIRAISE Webサイトに詳しい情報が載っておりますので、ぜひ多くのエンジニアの方々に見ていただきたいと思います!

MIRAISE On-Deck
MIRAISE RADIO

Interviewee Profile:

Megumi Minoguchi

PR, MIRAISE