株式会社Spiral CEO 石川 知寛さん

屋内ドローン自律飛行システムで世界を目指す

2020年09月02日

私たちの社会を支える建築・土木産業。この現場で、より安全に、より短時間で作業ができる未来を目指しているのがSpiralです。屋内に特化したドローン自律飛行システムを開発している石川さんに、現場担当者の救世主を目指す挑戦について伺っていきます。

屋内ドローンで現場管理にイノベーションを


左から3人目が石川さん。右端はMIRAISE CTO布田、その隣がPartner 岩田。

――さっそくですが、Spiralが提供しているサービスについてお話しいただけますか?

石川:Spiralは、屋内に特化したドローンの自律飛行の仕組みを作っている会社です。よく勘違いされるんですが、ドローンの機体本体は作っていません。GPSが使えない屋内で、ドローンを自動で飛ばすことに特化したソリューションやサービスを作っています。

布田:ドローンの機体というハードではなく、ソフトウェアの部分を開発されているということですね。実際に、どんな業界でどのように使われているのでしょうか。

石川:主に建築・土木の現場です。高層ビルや高層マンション、高速道路などを作っている現場ですね。現場の管理や写真撮影を今は人が全部やっているんですけど、こうした仕事をドローンに置き換えて自動化しようとしています。

一般の方がこうした現場を見ることはなかなか難しいと思うのですが、行くと分かるんですよね。「あー、これはドローンが必要だ…!」と。

なぜなら、人力で回るにはあまりにも果てしなく広い、長い、でかい(笑)。今はそうした現場を持つ企業をターゲットにしています。お客さんからは「巡回系を革新してほしい」と言われていますね。

ドローンで建設現場管理の自動化を目指す

――「巡回系」と言いますと…?

石川:先ほどお話ししたような、現場で写真を撮ったり、点検したりという業務のことですね。異常や緊急事態ってそうそう起こらないんですけど、日々やらなきゃいけない。多分何も起こらないからやらない、というわけにはいかないんですよね。でも、現場が広すぎて人間ではカバーしきれないところがある。

布田:僕も実際に現場を見に行ったのですが、鉄骨に異常がないか、スケジュール通りに工事が進んでいるかなどは基本的に人が点検して回っているんですね。それだけでなく、写真を撮ったり、レポートしたりという仕事もあって。

僕らはビルのフラットなフロアしか知りませんけど、建設中の現場には資材やボルトが大量にあるなど、人が移動するのは楽ではない。でも、逆に頭上の空間は広くあったりするんですよね。そこでドローンの出番ではないかと。

現場の使いやすさを徹底追求して生み出した、自律飛行の仕組み


布田:障害物の多い建設現場で、ドローンをどう飛ばせばいいのか。Spiralの開発しているドローンには技術的な特徴がありますよね。そのあたりのお話をお聞かせいただけますか?

石川:従来、GPSが使えない所でドローンやロボットを制御するときは、カメラや複雑かつ高価なセンサーを使って、人間と同じように地図を作ったり、自分の位置を推計したりする仕組みを使っていました。人型ロボットのPepper(ペッパー)や、ロボット掃除機のルンバとかはまさにそうした仕組みですね。

ただ、ドローンの場合、ルンバと違って三次元なのでなかなか急に止まれない。だからといって、スピードを落としたら実際の仕事には役に立たない。ある程度の速度がないと、巡回を自動化する意味がありません。例えば1秒間に1cmしか進まないとなれば「いや、何時間かかんねん!」ってなっちゃいますよね(笑)

それに、複雑なシステムのものはどうしても高価になりがちで、現場の人たちにとっても難しくて扱いづらくなってしまうんですね。「オレはドローンのお守りをしたいわけじゃない!」と。

――仕事を楽にするために導入したはずが、逆に複雑なドローンの操作のために仕事が増えてしまうという…。

石川:それって、けっこう「あるある」なんですよね。僕自身も企業で生産技術として働いていたとき、現場の人たちが使えないものを導入すると必ず「これはお前が面倒みろよ。じゃあな、オレはパチンコに行く」みたいになって(笑)。

それなら、どうしたらGPSがない環境でも簡単にドローンを使ってもらえるかを考えたんです。そうしてたどり着いたのが「マーカー」でした。別に大したことじゃないんです。QRコードみたいな、誰もが見たことがあるようなものを目印にドローンが飛ぶ、こういう仕組みですね。

グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」に、森に捨てられた兄妹が道々に落としていった光る白い石を道しるべに家に戻る…というシーンがありますけど、原理はそれと同じです。

QRコードのような「マーカー」を目印に、ドローンが飛ぶ

――なるほど。マーカーを目印として、ドローンが動く仕組みということですね。ところで、建設現場ではそもそもGPSが使えないことが多いのでしょうか?

石川:屋内の現場ではほとんど使えません。さらに、トンネルなど地下だとまったく使えませんね。

――そういった環境でも、安全かつ的確にドローンが飛べるシステムを作られているということですね。

石川:そのとおりです。物体を無線で制御するってけっこう大変なんですよ。特に、閉塞空間で無線を使って飛行物体を制御するのは難しい。無線が切れたら終わりですからね。市販のドローンでも、無線をスパッと切るといきなり変な動きをするんです。

――無線が切れたら、その場にただ留まっているのかと思いました…。

石川:僕らが実験をするときは、ドローンがどこに行っても捕まえられるように、タモを持つ役を必ず配置していますからね。ホントの話です(笑)

僕たちのシステムだと、ドローン本体と、ドローンに搭載するカメラ、そして紙に印刷したマーカーさえあれば、すべてが完結する形です。わざわざパソコンから機体を制御する必要がない、というのがひとつの特徴だと思います。

布田:今市販されているドローンや、普通の人が思い浮かべるドローンは、操縦士がいて、コントローラーがあって、撮影に使ったりするというものですよね。

石川さんが目指しているのは、その先にある「無人化」です。ですから、ドローンに何か異常が起こっても、人に危害を与えたり、現場に損害を与えたりしないようにする必要がある。何が起きても大丈夫なようにする、という開発もきちんとしなければならないんですよね。

屋内ドローン界の「カローラ」を目指して

Spiralのメンバー

――石川さんは、起業する前はどのようなことをされていたのでしょうか?

石川:直近では、車の組付けや溶接をするための産業用ロボットを全国で売り歩いていました(笑)。北は青森、南は九州まで行っていましたね。

ドローンとの関わりは、学生時代に共同で飛行ロボットの会社を作った頃からです。そのときに、たまたま今で言うドローンの仕事をもらっていたんですね。

今でこそドローンの存在は広く知られていますが、10年前はまったくそんなことはなくて。「なんかアブナイものを公園で飛ばしている奴がいるぞ」って思われて、航空局とかいろんなところから電話がかかってきたり(笑)。

――その後、ドローンが世に知られるようになってきて、産業用に進化していく…という過程を見られてきたと思いますが、その中でSpiralとして、どういったポジションを目指していくのでしょうか?

石川:まずは、屋内で使えるドローンを極めたいですね。「インテル入ってる」じゃないですけど、屋内ドローンには我々の自律飛行システム「MarkFlex®Air」が入っている世界にしようと。全世界でそうなることを目指そうと、よく自社の人間にも話しています。

――ブランドを確立していくということですね。

石川:A地点からB地点に移動したいとき、自転車で行くとか車に乗るとか、方法はいろいろありますよね。うちのもうひとりの役員が言っているのですが、屋内ドローン界には、車に例えるなら今はベントレーしかないんだよ、と。ベントレーでA地点からB地点に行きなさいと言われている状態。でも、普通の人ってベントレーなんてなかなか買えないじゃないですか。

――買えないですよね…。

石川:移動はしたい、でもベントレーしかない。買えない。それなら、誰にでも手が届くカローラを用意すればいい。トヨタはベントレーみたいな高級車じゃなくて、カローラを作って成功した。だからSpiralも成功すると(笑)

――なんだかすっと入ってきます。分かりやすい!

石川:これはなかなかエンジニアにない発想で。エンジニアはどうしても、使う言葉が専門用語に偏りがちなんですよね。その役員がこの「ベントレーとカローラ」の話をしたとき、僕メモりましたもんね。「もう1回言ってください!」って(笑)。

「飛ばす場所」探しが最大のハードルだった

グローバルなチームで、世界を目指す


布田:ハードウェア寄りの起業をするにあたって、大変だったことはありますか?

石川:ソフトウェアの場合は、作るのも公開するのもパソコン上で済んでしまいますが、僕らの場合はどうしても「モノ」があります。いちばん大変だったのは場所探しですね。飛ばす所がなくて。

布田:なるほど、そこなんですね。

石川:最初は、僕が住んでいるシェアハウスでドローンを飛ばしていたんですよ。ちょっと操縦間違えて、ハウスメイトが料理しているフライパンの中にぽとって落ちたりとか(笑)。でも、そのときは手のひらサイズのドローンを使っていたので、「おお、ごめんごめん」で済むわけですよ。でも、機体が大きくなってくるとさすがに家の中では飛ばせなくて…。

――実際に飛ばして検証できる場所がないことが、いちばん大変だったんですね。

石川:その場所がなかったがために、開発が止まってしまうこともありました。お金があればどかーんといい感じの場所を借りられますけど、起業当初はそういうわけにもいかないので…。「夜中だけでいいので飛ばさせてください」と言って、ある企業に間借りさせてもらったこともありました。僕らが手がけているのは屋内ドローンだから、外だと意味がない。「河川敷で飛ばせばいいじゃないか」というわけにはいかないんですよね。

――今はどういう場所で飛ばしているんですか?

布田:工場跡みたいな物件をゲットしたんですよね。ガンダム作っていそうな場所。

石川:はい、もう最高!な場所です(笑)。住宅街を抜けて抜けて抜けて…こんな場所がここにあるなんて!という。そして、そこでドローン飛ばしているのは外国人ばかりで、日本人がほとんどいない、みたいな。

布田:Spiralには外国人の社員がたくさんいますからね。次の機会には、エンジニアのグローバル採用などについてもお聞きしたいですね。

――Spiralのチーム構成はすごくグローバルなんですよね。次回はぜひ、そうしたお話もお願いします!

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Interviewee Profile:

Ryosuke Fuda

Venture Partner & CTO