<p></p><div class="iframe-container width-set height-set dimensions-set" data-width="100%" data-height="232px" data-src="https://open.spotify.com/embed-podcast/episode/7pasLxdvrsNgOaHSwXPSEm"><iframe class="" style="" data-embed-type="generic" data-original-link="&amp;#60;iframe src=&quot;https://open.spotify.com/embed-podcast/episode/7pasLxdvrsNgOaHSwXPSEm&quot; width=&quot;100%&quot; height=&quot;232&quot; frameborder=&quot;0&quot; allowtransparency=&quot;true&quot; allow=&quot;encrypted-media&quot;&amp;#62;&amp;#60;/iframe&amp;#62;" src="https://open.spotify.com/embed-podcast/episode/7pasLxdvrsNgOaHSwXPSEm" width="100%" height="232px" frameborder="0" allowfullscreen="true"></iframe></div><p>-------------------------------------------<br>MIRAISEでは、課題解決に挑むエンジニア起業家の生の声をお届けするラジオ番組「<a href="https://www.youtube.com/channel/UCV4Ju4OHLYp-2we7vLxWtTg/videos"><u>MIRAISE RADIO</u></a>」を配信しています。こちらのブログでは、「読む MIRAISE RADIO」として、起業家たちのストーリーをラジオの雰囲気そのままにお伝えしていきます。</p><p>● スピーカー|一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事 関 治之 / MIRAISE Partner &amp; CEO 岩田 真一<br>● MC|MIRAISE PR 蓑口 恵美<br>-------------------------------------------</p><p>「オープンコミュニティでよりよい社会を作る」をミッションに、住民と行政、企業が手を携えてより良い社会を共に作っていく「シビックテック」推進の第一人者として精力的に活動している、一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関治之(せき・はるゆき)さん。</p><p>今回は、MIRAISEが今年8月に開催するイベント「未来図会議」にゲストとして登壇いただく関さんと、MIRAISE代表・岩田が、オープンソース、そしてオープンコミュニティが拓く新たな世界について語ります。</p><p>※<a href="https://www.miraise.vc/news/miraise-kaigi007"><u>本イベントは2021年8月に開催しました</u></a></p><p></p><h2><strong>楽しみながら課題解決に貢献できるオープンコミュニティ</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/11/15/09/58/35/65bbad15-4628-4075-a8e2-416a7fbc2d86/radio23_01.jpeg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>一般社団法人コード・フォー・ジャパン 代表理事 関 治之さん</p></div><p>――関さんは、コロナ前はもとよりコロナ禍においても数々のメディア出演をこなし、デジタル庁開設に向けた情報発信を行うなど、以前から精力的に活動されていますね。改めて、関さんの取り組まれていることについて教えていただけますか?</p><p><strong>関:</strong>「オープンコミュニティでよりよい社会を作る」というミッションで活動しています。僕自身は25、6年前からエンジニアをしていて、オープンソースなどのコミュニティで長く活動してきました。その中で、組織の垣根を超えた人々の繋がりに非常に価値を感じていまして、こうしたオープンカルチャーを活用して世の中の課題解決ができるのではないかと思い、コード・フォー・ジャパンを2013年に立ち上げました。</p><p>ほかにも、オープンソースのGIS(地理情報システム)を使ってシステム開発を行い、地域課題を解決するソフトウェアを企業と一緒に作っています。また、チームビルディングやプロジェクト進行などのサポートを通じて企業のオープンイノベーションを推進する、株式会社HackCampの代表も務めています。</p><p><strong>岩田:</strong>オープンコミュニティやオープンソースのカルチャーを社会実装に持っていくというパワーが、関さんのすごさだと思います。リアルなコミュニティでも人を巻き込み、実行に移していく、そうして行動で示しているところが本当にかっこいい。そんな関さんのベースとなっている、オープンソースカルチャー、オープンコミュニティについて詳しくお聞かせいただけますか?</p><p><strong>関:</strong>僕が社会人になったのは1990年代後半でしたが、ちょうど2000年くらいにオープンソースが一気に普及し始めました。サーバーを中心にさまざまなソフトウェアにおいて、オープンソースの方が品質が高いと言われるようになった時代でした。</p><p>――関さんも、オープンソースに関わっていらっしゃったんですよね。</p><p><strong>関:</strong>はい。オープンソースコミュニティに参加するようになって、会社とは別のコミュニティの中でいろんな活動をすることができました。業務でやっていることをオープンソースの改善に活かすなど、会社の仕事をコミュニティに還元するといったことですね。タダで使える分、みんながフィードバック、コントリビューションする。その関係が素晴らしいと感じていました。お金をもらわなくても、みんな楽しいからやるという世界が広がっていたのです。</p><p>――その経験が、コード・フォー・ジャパンにも活きているということでしょうか。</p><p><strong>関:</strong>エンジニアはもともと課題解決が好きな人種です。その力をいい方向に活かし、楽しみながら課題解決ができる社会を作ることを、コード・フォー・ジャパンでもすごく大切にしています。アメリカの大学の研究室からどんどん発展していったオープンソースコミュニティは、すでにひとつの思想でもあり、今では本当にいろんなものがオープンソースになっています。こうしたオープンソースのように、みんなが自然と良い世界に貢献できるような、そんな新たな仕組みを作りたいというのが、僕の個人的な野望でもあります。</p><p></p><h2><strong>オープンソースカルチャー浸透に向けて</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/11/15/09/58/56/a440a462-e50f-458a-a245-51a9949611da/radio23_02.jpeg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>オープンソースコミュニティを活かし、より良い社会を目指す</p></div><p>――エンジニアの方にはオープンソースの考え方は身近なものだと思うのですが、エンジニア以外の人、例えば行政の方々などに対して、関さんはオープンソースの概念をどのように伝えているのですか?</p><p><strong>関:</strong>例えば行政の方には「作ったものは公共財として公開しましょう」という考え方ですよ、とお伝えしています。そうすればみんなが使えるものになって、そこからさらに派生してさまざまなことが生まれる可能性がありますよ、と。タダで図書館を建てられるようなものだと説明することもありますね。</p><p>――「公開」というと、「いや個人情報が…」と懸念を示す方もいらっしゃると思うのですが、そうした点はどのようにクリアされているのですか?</p><p><strong>関:</strong>まず、ソフトウェアの仕組み自体に個人情報は含まれません。作ったソース、ソフトウェアの作り方を公開しているだけなので、プライバシーの漏洩のようなことはほとんどないはずです。セキュリティ面での脆弱性には気をつけなければいけませんが、基本的に個人情報が漏れてしまうということはないのです。</p><p><strong>岩田:</strong>いい質問ですね。エンジニアでない人の中には、ソフトウェアとデータの違いがよくわかっていない人もいますから、「データ」の方を公開されるんじゃないかと思ってしまう。例えると、Excelというソフトウェアの作り方を公開するけど、Excelに入力した数値なんかが漏れてしまうことはない、ということですね。</p><p>――仕組みだったり場所というものが公共財、公共の財産であって、そこに入れるものは個人のもので、個人のプライバシーがある形として管理されないといけないということですね。</p><p><strong>岩田:</strong>そうですね。データは中身です。その入れ物、操作する部分がソフトウェアです。だから、データの部分はオープンソースであろうがなかろうが、データの持ち主が管理しなければいけない。ただ、オープンソースのデータ版、コンテンツ版である「クリエイティブ・コモンズ」というのもありますね。考え方は同じで、タダでデータやコンテンツを使っていいけど、必ず「クリエイティブ・コモンズ」のマークを付けて公開しましょうというものです。</p><p><strong>関:</strong>「オープンデータ」と呼ばれる、行政の集めたデータを公開しようという話も出てきています。もちろん行政の持つ個人情報ではなくて、避難所の情報などを公開していこうという動きです。</p><p><strong>岩田:</strong>そうすると、それを元によりよい見た目のサービスを誰でも作れるようになったり、自分たちまちに合った使いやすいものにしたりとか、データを集めてくるところから自分でやらなくてもいいよね、と。世の中がこうした流れになっていくと、データとソフトウェア、パブリックとプライベートの違いを理解し、判断できるリテラシーはますます必要になりますね。</p><p><strong>関:</strong>その点は、まだまだきちんと丁寧に説明しないといけない部分ですね。「オープン」と聞いて、全部一緒くたにして「ダメだ!」と言われてしまうと、話が進まなくなってしまいますから…。</p><p>――現在、「DX人材が必要」「企業のDX推進を」と盛んに叫ばれていますが、経営者・社員ともにリテラシーがなければ、議論も設計もできないですね。世の中一般の人々の認知も、どんどん変わっていかなければいけない時代だと感じました。</p><p><strong>関:</strong>そうですね。例えば行政の場合、関わる部門すべてが理解しているとすごく進めやすいですね。これは利用する側も同じで、市民側から「セキュリティはどうするんだ!」「個人情報が漏れるのでは」というような批判が来てしまうと、行政としてはプロジェクトを止めざるを得ない結果にもなりかねません。ですから、広く理解してもらうための努力は本当に大切なことです。</p><p></p><h2><strong>1週間で立ち上げた東京都「新型コロナウイルス感染症対策サイト」</strong></h2><p><strong>岩田:</strong>最近ではGovTechに注目が集まっていますが、例えばシンガポールはGovTech先進国で、コロナ陽性者の追跡アプリもいち早く開発・導入していました。シンガポールがGovTechで作っているものは、基本的にすべてオープンソースとして公開しているんですよね。</p><p><strong>関:</strong>アメリカでも、オバマ大統領時代に「Federal Source Code」ポリシーというものが出され、税金で作ったソフトウェアは可能な限り公開するという方針になりました。政府内に「18F」という組織があって、シンガポールのGovTechチームのように、作ったものはどんどんオープンソースで公開しています。</p><p><strong>岩田:</strong>コード・フォー・ジャパンが手がけたGovTechとして、東京都の「<a href="https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/"><u>新型コロナウイルス感染症対策サイト</u></a>」がありますね。シンプルでとても見やすく、グッドデザイン賞も受賞しました。こちらもオープンソースで、北海道など他の自治体でも使われているんですよね。</p><p><strong>関:</strong>全国80地域ほどで使っていただいています。</p><p><strong>岩田:</strong>同じようなものを他の自治体が一から作ろうとすると、東京都のものと同じような機能を作るために同じようなことをやらなければならず、その分の税金も無駄になってしまいます。それがオープンソースとして公開されていることで、瞬時にいろんな自治体で立ち上げることができたということですね。</p><p>――このプロジェクトの背景は?</p><p><strong>関:</strong>昨年2月くらいに、東京都の宮坂副知事からお問い合わせいただき、コンペで選んでいただきました。よくある行政のサイトというのは、かなり見づらいものも多いですよね。PDFが開いたりとか、ひたすら文字が並んでいたりとか…。宮坂さんがおっしゃっていたのは、データをわかりやすく見せたいということでした。外国人も多くアクセスするから、ひと目でどういう状況なのかが直感的にわかるサイトを作りたいと。</p><p>――オープンソースで作られたんですよね。</p><p><strong>関:</strong>はい。オープンソースにすることで、他の地域でも使えるようになるし、いろんな人のフィードバックにより改善していけますよ、と提案し、採用していただきました。最初はもう、1週間かからないくらいで突貫でがーっと作って公開しました。その後GitHubにも公開すると、本当にたくさんの人たちから「ここはこう直した方がいいよ」「ここが壊れてるよ」などのフィードバックをいただき、一緒に改善しながら直していったというプロジェクトです。</p><p>――海外からも含め、300名くらいのエンジニアの方が関わったそうですね。1週間で立ち上げとは、すごいスピード感です。</p><p><strong>関:</strong>我々はそういうハッカソンライクな、緊急立ち上げみたいなのは慣れていますから…。災害などの際にも、そうした活動はかなりやってきました。だから「こういう問題だったらこの人が詳しそう」とすぐ声をかけてやってもらえるという繋がりがあり、それらが今回も活きましたね。</p><p>――3.11が、関さんがコード・フォー・ジャパンの活動を初めたきっかけになったと以前伺ったことがありました。当時と比べて、今回の課題に対してエンジニアができることや、動くスピード感は、この10年で大きく変わったと感じますか?</p><p><strong>関:</strong>大きく変わりましたね。東日本大震災の時は、まだ一部の人たちだけが一生懸命、よくわからないまま動いているような感じでした。行政との繋がりもなく、「知る人ぞ知る」活動で、やることだけで精一杯という。でも今回は、東京都と一緒にやったということもあったし、これまでの繋がりの蓄積もあったので、別の地域に転用されるのも早く、何か合った時に「すぐこれやってください」というやりとりがスムーズにできました。3.11の頃と比べると、活動に力強さがありましたし、その広がりや深さも段違いにだったと思います。コード・フォー・ジャパンのチームだけじゃなくて、各地でいろんな活動が生まれたこともすごく良かった。</p><p><strong>岩田:</strong>今回は、日本全体、もっと言えば世界全体で共通の問題が起きたというのがそれを後押ししましたね。自治体はそれぞれIT化が進んでいる所もあれば、FAXしかないような所もある中で、すべての自治体が横連携しながらある意味強制的に動かなければならなかった。さらに、デジタル庁という旗振り役もできました。そこに、これまでしっかり実績を積み上げてきた関さんのような方がいて、活動にコミットできたのは本当に良かったなと思っています。</p><p></p><h2><strong>自ら関わり、自ら手を動かすことが「幸せ」のカギ</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/11/15/09/59/13/04b04750-2d75-407b-b454-021565527864/radio23_03.jpeg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>ソフトウェア開発者が集う日本最大級のカンファレンス「Developers Summit」で登壇する関さん</p></div><p>――今後は、非エンジニアである私たちも含めて、デジタル前提の社会で自分は何ができるかを考え、民間企業や自治体が一緒に課題解決に向けて動けるようになる必要があると思います。その中で、コード・フォー・ジャパンは「make our city」という言葉を掲げて活動されていますね。その言葉に込めた想いとは?</p><p><strong>関:</strong>現在、コード・フォー・ジャパンでは「make our cityプロジェクト」を進めています。現在、スマートシティやスーパーシティという言葉が取り上げられ、一部で盛り上がっています。ドローンがモノを運んでくれるとか、自動運転とか、ITを使って便利なまちをつくるという世界観で、日本でも「Society 5.0」というのを掲げていますね。今だと、企業や自治体が勝手に便利なサービスを作ってくれるという他人事みたいな感じですが、「make our cityプロジェクト」は、それをもっと市民中心でやろうというプロジェクトです。</p><p>――「Society 5.0」の紹介サイトには素敵な動画がいろいろありますが、それを見ると、ただ待っていたら「Society 5.0」が来るのかな、という感じがしますよね。確かに…。</p><p><strong>関:</strong>そんな感覚の人が多いと思うんですけど、それで地域や人々が豊かになるかというと、実はそんなことはないと、ITをよく知っている我々だからこそ思います。消費者的な関わりだと、便利になったと思っても、豊かになったとは思わない。ですからコード・フォー・ジャパンでは、自分たちが関わることを大切にしたいと思っています。スマートシティというキラキラしたものに単に使われるのではなく、自分たちのまちをどうしたいか、持続可能性なども含めて地域の中でしっかり議論をして、手を動かして小さな改善からIT・デジタルを使っていく。その先に豊かな地域があると思うのです。そのためにいろんなツールやワークショップの型を作り、実際に地域の人たちと一緒に実践しているところです。静岡県浜松市など、いくつかの地域との協働が始まっています。</p><p>――例えば体育館のような公共施設は、行政が建ててくれて、市民はその恩恵を受けるというものですよね。それが市民と行政の関係性だと思いこんでいる方も、まだまだ多いと思います。そうではなく、自ら関わり、未来はこういうまちにしたい、こういうまちに住みたいと議論をして、自ら作る側に立つ。それは、すごいマインドの転換ですね。</p><p><strong>岩田:</strong>それはすべて、オープンソースカルチャーですね。根っこがそこにある。誰かが作ったものを買って使うことから、自分たちで作っていく世界へ。1人じゃできないから、いろんな人の力を借りて、自分たちが欲しいものを作っていく世界観ですね。</p><p><strong>関:</strong>すでにあって、限定された用途にしか使えないものを使うのではなく、自分たちで作って、用途に応じて柔軟に変えられるDIY的なものからクリエイティビティが生まれます。クリエイティビティは、幸せにすごく影響するんですよね。</p><p><strong>岩田:</strong>関さんの言葉の端々からその思想を感じます。</p><p>――一流料理店のカレーライスもおいしいけど、自分の作ったカレーも自分に合っていておいしい、ということですね。</p><p><strong>岩田:</strong>そうなんですよね。作っている最中が楽しかったとか、儲かるとか安いとかを超えたところにある豊かさというのは、そういうことなんだろうなと思います。</p><p><strong>関:</strong>この流れがさらに大きくなるには、まだまだ時間はかかると思います。しかし最近、コード・フォー・ジャパンでは10代後半や20代前半の方がすごく積極的に活動してくれています。次の世代にはそれが当たり前という形になっていくと、コード・フォー・ジャパンが存在する価値があったと実感できると思います。</p><p><strong>岩田:</strong>ソフトウェアだからこそ、その場に行かなくても世界中に貢献できるんですよね。</p><p><strong>関:</strong>それもまた面白いところですよね。僕らは台湾のコミュニティとすごく仲がいいのですが、彼らのプロジェクトを手伝ったり、逆に手伝ってもらったりしながら、気軽に国境を超えたコラボレーションができています。</p><p><strong>岩田:</strong>「手間返し」という古い言葉があります。お金で払うんじゃなくて、実際に手伝ってあげることで返す。その方が豊かな世界ができますね。お金で解決するとある意味毎回毎回清算されてしまいますが、「手間返し」は繋がっていく世界です。</p><p><strong>関:</strong>その繋がりを通して、信頼関係が本当にいろんなところに生まれていく。そんな世界の実現を目指して、今後も活動を続けていきます。</p><p>――ありがとうございました!オープンソースカルチャーの豊かさと深さを感じたお二人の対談でした。後日開催しますMIRAISE「未来図会議」も楽しみにしています!</p><div class="img-container"><img src="https://lh5.googleusercontent.com/ZHKrrzQl912nGgXh1IaEfKhVg6fKD1QsQv831-GgirMZNZ2zT99wF23kuT5Yg5ANdireiKp5pjVBKBO_fa8shZKdpT8EqRoecKEvzBbEKHMT3B7sDTq99GwlzlmOOMQAUjBaGygS" link_href="" link_target=""></div><p>◆<a href="https://www.code4japan.org/"><u>コード・フォー・ジャパン</u></a><u><br></u>◆<a href="https://www.miraise.vc/news/miraise-kaigi007"><u>MIRAISE「未来図会議07」の開催報告</u></a></p>
<p>HR・GovTechを中心としたITサービスの開発・展開を行う株式会社HAB&amp;Co.(ハブアンドコー)は、地方発のスタートアップとして、また中小・零細企業に目を向け、本質的な課題解決に取り組む企業として注目を集めてきました。</p><p>そして5期目となる今年8月5日、医療・福祉分野での人材紹介・派遣サービス大手のトライトグループと株式譲渡契約を締結し、同グループの一員として事業を展開していくことを発表しました。</p><p>今回のM&amp;Aは、MIRAISEの初イグジット事例となります。HAB&amp;Co.設立からこれまでの事業展開とこのたびのM&amp;Aについて、MIRAISEの代表の岩田がHAB&amp;Co.代表の森祐太さんにお聞きしました。</p><p></p><h2><strong>人材採用に悩む中小・零細企業に向き合う</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/30/8ad0479b-f16b-405c-ae36-5f8d3408dbe3/habco202108_01.jpg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>株式会社HAB&amp;Co.代表取締役 森祐太さん</p></div><p>――この度はイグジットおめでとうございます!まず、HAB&amp;Co.と森さんご自身について、簡単にご紹介いただけますか?</p><p><strong>森:</strong>HAB&amp;Co.は2017年に創業した会社です。主に大分・福岡を中心に事業展開をしており、HRTechおよび、GovTechと呼ばれる行政系データと連携したサービスを展開しています。5期目に入ったこの8月に人材紹介・派遣サービス大手のトライトグループに株式をすべて売却し、グループ入りさせていただきました。</p><p>主要サービスの「SHIRAHA」は、地方の中小・零細企業の人材採用に関する課題解決を目指すプロダクトです。自社の専用採用サイトを手軽に作成できるのが大きな特徴で、求人票の作成、さまざまな検索エンジンとの連携、応募者の管理やコンテンツ管理などの機能を備え、求職者のリード獲得から、応募、面接、採用決定といった一連の流れをシームレスにサポートしています。中小・零細事業者の方でも、手軽に自社メディアを使った採用活動がスタートできるサービスとなっています。</p><p>――起業には、ご家庭の影響も大きかったとか。</p><p><strong>森:</strong>私は大分県竹田市の出身で、祖父が画家、父は建設業の社長という、起業が身近な家系に育ちました。キャリアの前半は、リクルートスタッフィングや高等学校協会でのキャリア教育など、採用系の仕事に携わってきました。そこからエンジニアリングを学び、自分のWebサービスの立ち上げや、地元大分のスタートアップの取締役を経て、HAB&amp;Co.設立に至りました。</p><p><strong>岩田:</strong>投資を決める時から、森さんの課題に対する姿勢がすごく印象的だったんですよね。地元のことも、これまでのキャリアを通じて採用活動についてもよく理解しており、人的・経済的に余裕のない中小・零細企業に対するDXという切り口で、本質的な課題を解決しようとしていました。便利なツールはたくさん提供されていますが、中小企業にとっての本当の課題はそれらを活用できる「人がいない」ことだと見抜き、そこに立ち向かっている。そういった起業家としての課題解決の姿勢が、今回の成功に結びついたと思います。</p><p></p><h2><strong>本質的な課題解決と経済合理性との狭間で悩んだことも</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/39/32ed48c3-77b0-4042-91b4-a05da252a669/habco202108_02.jpg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>MIRAISE代表の岩田(右)と森さん</p></div><p>――MIRAISEが投資させていただいたのはちょうど1年前くらいでした。その後のビジネスの展開について聞かせていただけますか?</p><p><strong>森:</strong>想定通りにいかないことの方が多かったですね。私たちが対象とする地方の中小・零細企業には、東京のタクシー広告でよく見るような大手のHRサービスはフィットしません。それらはすごく高機能で良い面もたくさんあるのですが、地方企業の根本的な課題として、そのサービスを使うための時間がなく、その業務をできる人もいない。ソリューションを使いこなせるかどうか以前の問題を、私たちは解決しようとしていました。そのため、一般的なスタートアップが描くような事業曲線や、SaaSの良さである指数関数的なユーザー数の伸長が望めない期間がありました。具体的には、CACやCPAといった顧客獲得単価がなかなか見合わないということがありました。これは、今でも課題として感じているところです。</p><p><strong>岩田:</strong>営業活動やお客さんとの話の中で、新たなニーズが見えてきて、プロダクトやサービスに反映されたということはありますか?</p><p><strong>森:</strong>この領域はロングテールで、非常に時間がかかるものなんだということが見えてきました。5年や10年のスパンの中で、きちんと足をつけてやっていかなければなりません。投資していただいたお金は、一般的には一気に売上を伸ばすために広告費などにつぎ込んだりしますが、我々にとってはそれは効果的ではないと判断しました。HRTechのサービス群を構築しようという戦略を立て、ミニマムなサービスをたくさん作っていくことにしたのです。それぞれのサービスに申し込んでいただいたお客様を包括的にサポートする形で、一企業に対して深く入っていくスタイルで事業を進めていきました。</p><p><strong>岩田:</strong>ロングテールという表現はまさにぴったりですね。その「テール」の部分を取りきっていくために、森さんたちが試行錯誤してきたアプローチは今後も続けていくのだと思います。スタートアップ界隈では、そのようなアプローチはまだあまり事例のないやり方かもしれませんが、HAB&amp;Co.は先行して取り組んできている。それは大きな強みと言えますね。</p><p><strong>森:</strong>経済合理性という意味では、少し難しい領域だったのではと感じています。今でこそ、SDGsが注目されて社会課題にも目が向くようになってきていますが…。そんな中で、心から私たちを信じて出資してくれたMIRAISEさんには、本当に感謝しています。</p><p></p><h2><strong>始まりは1本のメールから</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/47/66b401a3-0028-42b9-8693-95a6fc9e27a3/habco202108_03.png" link_href="" link_target=""></div><p>――トライトグループとの関わりはどのように?</p><p><strong>森:</strong>昨年12月にトライトさんからメールをいただいたのがきっかけです。お話を伺う中でミッションやビジョンに非常に共感しましたし、我々としても、大手と組んでいくことはもちろん望んでいたことでした。その後PoCに進み、年明け頃から協業を一部スタートしていったという流れです。</p><p><strong>岩田:</strong>トライトさんからメールでお問い合わせいただいたということは、HAB&amp;Co.や「SHIRAHA」について、すでに情報をお持ちだったということですね。</p><p><strong>森:</strong>MIRAISE PRの蓑口さんにもいろいろお手伝いいただいたメディア掲載の中で、「TechCrunch」や「BRIDGE」の記事を見ていただいてお問い合わせ下さったそうです。</p><p><strong>岩田:</strong>やはり、露出はとても大事ということですね。日経新聞でも、大分支局の方が地元発のスタートアップとして大きく取り上げてくださったことがありましたね。大分からイグジットが出たということは、良いロールモデルになるんじゃないかと思います。</p><p><strong>森:</strong>まず、地方ではプレーヤー自体が非常に少ないですし、リスクマネーの供給元もほぼない状態なので、なかなかスタートアップが立ち上がってきません。資金調達ができたとしても、イグジットまではなかなか行き着かない。そんな中で、私がやらないと次が立ち上がってこない、お金が下りてこない。おこがましいのですが使命感を持ってやっていました。</p><p><strong>岩田:</strong>地方創生や町おこしとなると、地元の名産や企業誘致、観光という話にすぐなってしまいますよね。でも、IT企業はどこにいてもできます。森さん、HAB&amp;Co.がロールモデルとなることで、大分だけじゃなくて他の地方でもIT企業の創出や活性化にひとつの答えが出てくるかもしれないと思いました。</p><p></p><h2><strong>ミッション・ビジョンを共有、協業からM&amp;Aへ</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/07/27/12/20/23/a772fead-a44b-41f0-a5b1-1b128486824f/----------2021-07-27-12.20.03.png" link_href="" link_target=""></div><p>ーートライトグループとのお話は、その後どのように進みましたか?</p><p><strong>森:</strong>最初は、どれくらいシナジーがあるかという検証からスタートしました。企業側と求職者側の需給ニーズのギャップを埋め、マッチング機会を創出していくという取り組みの中で、我々のサービスや開発力がどう関わり、成果を出していけるかを、技術的な側面を中心に検証しました。トライト側のエンジニアや営業の方とも関わり、ちょっとしたプチ開発をして作った商材を売ってみたりとか。</p><p><strong>岩田:</strong>このあたりは他のエンジニア起業家の方にも大いに参考になると思います。森さんは結果的にうまくいきましたが、企業相手の協業というのは、お金に結びつくかどうかもわからない案件が多いわけですから、営業やビジネス開発には難しさがあると思います。ノウハウや技術だけ聞き出されて終わり、なんていうこともありますからね。森さんは、そういう結果も恐れずに真摯に対応されたわけですが、お気持ちとしてはいかがでしたか?</p><p><strong>森:</strong>確かに、岩田さんが仰るような話は”スタートアップあるある”ですよね。工数をかけてやっても何も生まれなかったという話もよく聞きます。我々の場合は、お互いのミッションやビジョンという根源的な部分がマッチしていたので、迷わずに進むことができましたね。</p><p><strong>岩田:</strong>トライトさん側の熱量や、本気で求められているということを、お話ししていく中で感じ取れた、ということでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>その通りです。我々としても、本気で取り組まなければうまくいかない、という姿勢を見せたつもりでした。そして、やるんだったら先方の想像を超えるスピード、クオリティでやっていこうと意識していました。</p><p><strong>岩田:</strong>本質の部分と目の前の売上はどちらも大事ですよね。本質をひたすら追求し、そこから外れることは一切やらないというスタンスで、目先の利益にとらわれずに大きくなった会社の話も聞きます。一方で、頑固になりすぎて、本質的な部分に共鳴して求めてくれるパートナー企業をすべて蹴ってしまう起業家もいますよね。スタートアップは本来誰かの役に立つためにやっているはずなので、ただただ孤高を守るのも違うかなと僕は思います。トライトグループさんとHAB&amp;Co.はその後M&amp;Aに至るわけですが、そこは森さんの決断で行ったのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>そうですね。本当に一緒にやっていこうというのは、やはりトップ面談で決めました。きちんとオフラインでお会いして、もう一度両者間で今後見ていくべき点を話し合った上で、一緒にやっていこうという話が自然と出てきました。それが4月頃で、そこからは急ピッチでいろいろと進めてきました。</p><p><strong>岩田:</strong>僕は自分のいた会社が買収されるというのはけっこう経験していまして。本当に誰も知らないんですよね。「SkypeってeBayに買収されるんだって」と、当時の社員はニュースで知りました。厳格な守秘義務があるので当たり前なのですが。HAB&amp;Co.の場合は、どのようなタイミングで社員さんとのコミュニケーションを始めたのでしょうか?</p><p><strong>森:</strong>私たちも、最後の最後まで社員には伝えなかったですね。最終的な基本合意ができてから共有を始めました。中途半端な情報を社員に伝えて結局破談に…ということにもなれば、かなり影響が大きいですから。まずはエース級のエンジニアなど、会社のキーマンとなる社員たちに1on1をしました。主要メンバーがこの件で退職してしまうことは、M&amp;Aの契約条項やDD(デューデリジェンス:買収監査)にも響いてくるので、繊細なハンドリングが求められました。</p><p>意識したのは「私の本心・本音をさらけ出す」ということです。今後も会社はHAB&amp;Co.として残っていくこと、まだまだ解決しなければならない課題がたくさんあること、あなたが必要だということを、本気で伝えにいきました。結果として、誰一人辞めずについて来てくれました。</p><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/50/58/1e7b19b0-0457-4cef-9011-7f29cd3c849c/habco202108_04.jpg" link_href="" link_target=""></div><div class="image-caption-1 additionalClassesSet " style=""><p>社員はM&amp;A後も1人も辞めず、変わらずそれぞれの業務に打ち込んでいる</p></div><p>――社員の方々は驚かれていましたか?</p><p><strong>森:</strong>それが、エンジニア系のスタッフが多いスタートアップあるあるで、あまり驚かない人の方が多かったという印象ですね(笑)。「自分の環境が変わらなければ別にいいよ」とか「給料上がるんですか?」とか、そういう感覚の人が多かったです。エンジニアの特徴が出たと言いますか…。</p><p><strong>岩田:</strong>おそらく森さんは、社員にインパクトがないようにということを気にされながらの交渉だったと思います。(トライトさんの本社がある)大阪に引っ越しの必要はなく、大分のオフィスのままである、とかね。ところで今回のM&amp;Aで、森さんとして譲れなかった条件はありますか?</p><p><strong>森:</strong>我々から言うのも少し微妙な話ですが、M&amp;Aはおそらく、バイサイド側の対応が非常に重要なのだと思います。我々のスタートアップとしての機動性と独立性を保ったままパフォーマンスを発揮するのが最も良いやり方だというのを、先方側が理解してくださっていました。僕らが譲れないと思っていたのはまさにそのことでしたから。</p><p><strong>岩田:</strong>バイサイド側の本来あるべき姿ですよね。「欲しい」と思ったものが、買った時に違う形になっていたら嫌なはずなのですが、途中で数字しか見ないような交渉担当者が出てきたりすると、おかしな方向に行ってしまう。僕にも経験があります。やはり、ビジョンやミッションの共通点など、そもそもの出発地点や大前提をキープしたまま交渉を続け、インテグレーションに進むというのがとても大事だと思いますね。</p><p></p><h2><strong>グループ上場も見据え、さらなる事業展開と課題解決へ</strong></h2><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/51/14/b973b5b4-00e9-4b3c-aa34-42b3123bdff4/habco202108_05.jpeg" link_href="" link_target=""></div><p>――M&amp;Aが発表されて、社員の方々も実感が湧いてくる頃だと思うのですが、まずやっていきたいことは?</p><p><strong>森:</strong>まずはきちんとPMI(Post Merger Integration:M&amp;A後の統合プロセス)を達成し、トライトさんとのシナジーを生んで、我々としても利益を出していくということを、数年間でやっていこうと計画しています。</p><p><strong>岩田:</strong>PMIは本当に大事で、M&amp;Aのプロセスとセットで取り組んでいくべきものです。ですから、PMIは交渉の段階から始まっているし、交渉内容がそのままPMIに影響しますよね。</p><p>――最後に、森さんとHAB&amp;Co.の展望についてお聞かせいただけますか?</p><p><strong>森:</strong>トライトグループは介護、医療、建設といった、日本の社会課題となっている領域を長年やっている企業ですが、我々の「SHIRAHA」も、ユーザーの4分の1ほどを介護事業者が占めています。今後は一緒になって、人材に関する社会課題の解決に取り組んでいくことになります。</p><p>さらに今後、グループ全体として上場も見据えています。我々の貢献で課題を解決しながら、もうひとつのゴールとしての上場に向かってやっていけるのは、高いモチベーションに繋がると感じています。我々だけではできなかったことが、グループだとできる。これからは大分・福岡だけでなく日本全国に目を向けて、本質的な課題を解決していくということをぶれずに今後もやっていきたいなと思っています。</p><p><strong>岩田:</strong>HAB&amp;Co.でやってきたことをそのまま継続して、そこに親会社のリソース活用が加わってさらに加速、拡大することができますね。森さん、そしてHAB&amp;Co.の社員にとっても、モチベーションがさらに上がる環境となるでしょう。加えて、親会社の上場という、経済的な面での大きな目標もできる。すごく良い状態になるんじゃないかなと思います。</p><p>――森さん、貴重なご経験をお話しいただきありがとうございました。HAB&amp;Co.をロールモデルに、地域のITの企業がイグジットするという事例がどんどん増えていくといいですね。HAB&amp;Co.のますますのご発展に期待しています!</p><div class="img-container"><img src="https://cdn.qurate.cloud/2021/08/26/13/51/27/c8a3ff1b-f161-4a0e-ba2b-a79239856a71/habco202108_06.png" link_href="" link_target=""></div><p>◆<a href="https://hab-co.jp/"><u>HAB&amp;Co.</u></a><u><br></u>◆『<a href="https://shiraha.jp/"><u>SHIRAHA</u></a>』<br>◆HAB&amp;Co.プレスリリース「<a href="https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000036135.html"><u>トライトグループとの株式譲渡契約締結について</u></a>」<br>◆<a href="https://www.miraise.vc/news/miraise-radio-009-habco"><u>MIRAISE RADIO #09. HAB&amp;Co.|CEO 森祐太</u></a></p><p><br></p>